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「動画配信サービス利用実態調査」から得た示唆とは-The Trade Deskはこう考える

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グローバル大手DSPのThe Trade Desk(TTD)が実施した「動画配信サービス利用実態調査」の結果が公表された。日本国内在住の2806名を対象にしたアンケート調査には、YouTube、Netflix、TVerといった主要な動画配信サービスに対するユーザーの意識と行動に関する知見が詰まっている。本調査からどのような示唆を導き得るかについて、TTD社に話を聞いた。
(聞き手:ExchangeWire Japan長野雅俊)

 

「動画配信サービスには支払わない」がほぼ半数

 

―改めて自己紹介をお願いします。

 

The Trade Desk の日本担当ゼネラルマネージャーを務める馬嶋慶です。2020年6月の着任以来、「オープンインターネットを対象とした透明性の高いプラットフォームの構築」という当社の理念をさらに浸透させるべく、顧客や社内との積極的なコミュニケーションを図ってきました。その過程を通じて把握した様々な課題に対しては、現在も試行錯誤を繰り返しながら取り組んでいる最中です。

 

―貴社は昨年末に「動画配信サービス利用実態調査」を発表しました。本調査を実施するに至った背景をお聞かせください。

 

当社のDSPは動画広告に大きな強みを持っています。動画配信サービスの動向には以前から注目していましたが、本社を置く米国と比較すると、日本の市場はまだまだ拡大の余地が大きい。とりわけ、テレビをインターネットに接続したコネクテッドTV(CTV)市場は日本ではまだ創世期です。現時点における動画コンテンツの消費のあり方や主な動画サービスに対するユーザーの意識を把握することで、デジタルマーケティング全般への示唆を得たいと考えました。

 

―調査を実施してみて、意外な結果はありましたか。

 

疑問を感じるような調査結果はあまりなく、例えば「若年層はPCではなく、スマートフォンで動画のコンテンツを消費する傾向が強い」など、この業界では以前から言われてきたことが改めて数値化されたという印象です。

 

意外な結果と言えば、「動画配信サービスのサブスクリプション費用を支払う場合、毎月最大で、合計いくらまでなら支払えるか」という質問に対する回答です。回答者のほぼ半数が「動画配信サービスに支払おうと思わない」との考えを示しました。

資料提供: The Trade Desk

 

既にNetflixを始めとする有料サービスが世界中で広まっており、また私自身は好きなコンテンツを視聴するためであれば課金を厭わないので、意外でした。日本のユーザーは恐らく地上デジタルテレビ放送やAVOD(広告付き動画配信)に慣れているのでしょう。課金に対してこれほど厳しい評価が示されるとは思っていませんでした。

 

UGCとOTTを区別する理由とは

 

―本調査では「個人が制作し、アップロードしたコンテンツ」を「ユーザー作成コンテンツ(UGC)」、「インターネットに接続された端末で視聴可能な、放送局などのプロが製作したプレミアムな動画コンテンツ」を「オーバー・ザ・トップ(OTT)」とそれぞれ定義して、両者を明確に区別しています。

資料提供: The Trade Desk

 

個人が制作したユニークな動画を視聴できるというのがUGCの魅力ではありますが、一方でそれらの中にはテレビ録画を無責任に投稿しただけのものも少なくありません。コンテンツの質において、著作権が適切に管理された、質の高いプレミアムな動画コンテンツを制作するプロの事業者のコンテンツを広告主はよりブランドセーフなプラットフォームと認識し、UGCプラットフォームとは差別化していることから、当社ではUGCとOTTを区別しています。

 

―区別した結果、UGCユーザーとOTTユーザーで異なる傾向が明らかになりました。

 

例えば、UGCユーザーとOTTユーザーでは利用する視聴端末がやや異なります。UGCは62%がスマートフォンでCTVは12.6%、OTTは46%がスマートフォンでCTVは24%です。一般的にOTTは長尺かつプレミアムなコンテンツを放映するので、大きなスクリーンを用いて動画視聴に専念するユーザーの割合が高くなるのでしょう。

 

自社の製品やサービスを音声付きで大画面を通して宣伝したい広告主にとっては、UGCよりもOTTプラットフォームの方が適していると言えるのかもしれません。

 

またOTTとUGCでは、どちらが良い悪いではなく、放映される広告の種類や質が異なります。両者の違いは思いのほか多岐にわたるというのが実感です。

 

―放送局などのプロが製作したコンテンツであれば、地上デジタル放送と同じような感覚で視聴されているということですね。

 

ただし、今度はOTTと地上デジタル放送を比較すると、OTTの方が専念視聴の割合が高くなります。例えば地上デジタル放送と同じコンテンツを流しているはずのTVerの方が、地上デジタル放送よりも専念視聴するユーザーが多いのです。恐らくオンデマンド形式の動画配信サービスの方が、ユーザーは観たいコンテンツを自ら選び取ることができるので、専念視聴の割合が高まるのだと思います。つまり同じ「半沢直樹」でも、視聴する手段が地上デジタル放送とTVerでは、ユーザー層も視聴形態も異なる可能性があります。

資料提供: The Trade Desk

 

さらに言えば、地上デジタル放送を録画した人が、果たしてどれだけしっかりとCMを視聴しているかという課題もあります。ユーザーが観たいときに、きちんと広告を表示し、かつターゲティング技術を活用できるAVODの優位性が今回の調査を通じて改めて浮き彫りになったと言えます。

 

CTVはマーケティングを変える

 

―「広告が嫌われる時代」と言われていますが、動画配信サービスにおいては視聴者が広告視聴を前向きにとらえていることも意外でした。

資料提供: The Trade Desk

 

若い世代が「広告と引き換えに無料でサービスを利用」という事業モデルに理解を持っていると考えられるのが一つ。また様々なデータが取得できるようになったことで、ユーザーの趣味嗜好に合った広告を出し分けできるようになったからだと想像します。今後は許諾したユーザーのデータをSSP経由でDSPが拾い上げ、広告会社がそれらのデータをより積極的に活用できるようになると、広告の許容度がさらに上がっていくでしょう。

 

―OTTに代表される動画広告が、テレビCMを超える日は来るのでしょうか。

 

CTVが今後どれだけ普及していくかにかかっています。一般論として、テレビCMの効果を測るデータは、広告会社が管理するリーチとフリークエンシー計測及び調査会社がまとめ上げるブランドリフト効果の調査結果などです。

 

ただし、これらのデータだけでは、宣伝した商品なりサービスの売上の増減との関連性が把握しきれません。テレビCMを打った後でウェブサイトの訪問数が上がった、オンライン購入が増えたということは分かるかもしれませんが、各ユーザーのカスタマージャーニー全体を見渡すことができない。だからこれまでマーケターは、テレビCM→ディスプレイ広告→ウェブサイト→コンバージョンといった各施策を段階的につなぎ合わせた「ファネル」の概念を用いてカスタマージャーニーの理解に努めてきました。

 

ところがCTVは、広告を放映するユーザー対象や気象条件などを細かく設定することで、認知媒体にも購入媒体にもなり得ます。従来のファネルという枠組みを取り払ってしまうような大きな可能性を秘めたCTVには大きな期待を抱いています。

 

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その広告費、しっかりと見られる広告に投資できていますか!?-ABEMAが語る動画広告業界の課題[インタビュー]

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コロナ禍でも成長を続ける動画広告市場。市場が大きくなると同時に、様々な課題も見えてきている。特に業界関係者の声として共通するのは、「どのように評価するか」ということ。

動画広告の効果について業界でもトップクラスの件数の案件を調査してきたという、AbemaTV ビジネスディベロップメント本部 プロダクトマーケティングスペシャリスト小島 功 氏に、動画広告の評価に関する課題について、お話を伺った。

 

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下 智之)

 

 

動画広告の効果

動画広告の効果については、日々調査をする中で、本質的な投資ができていないのではないかと感じるデータに触れることがよくあります。

一例を挙げると、広告配信の対象が顕在層なのか、低関心層も含めているのかでは効果が大きく異なる結果になるというものです。

 

私は、現状の広告業界では動画広告の扱われ方が、データドリブンになり過ぎていると感じています。ここでいうデータドリブンとは、例えば効果が単にCPIやCPAで評価されてしまうという意味合いです。これらの指標の最適化に傾倒するがゆえに、配信先が、「もともと効果が出やすい層」にターゲティングされてしまう傾向になりがちです。

そうなると、比較的効果が出にくい低関心層へのアプローチが軽視されてしまいます。

これはここ最近広告業界全体でみられるようになってきた傾向です。

プライバシー保護に対する声が高まりつつある中では、このような表面的な効率を求めたターゲティングをし続けていくと、ユーザーから広告が受け入れられにくくなってしまうと思います。

広告主が広告を出稿する際に、指標上効果が出やすいユーザーを求めることにより、媒体側もそれを受けてそのようなユーザーに絞って配信する傾向がありますが、そればかり続けていくと先細りしてしまいます。

広告は、表面上の指標に表れてこないユーザーを含め、どのようなユーザーに対しても効果を出すことが出来るというのが理想です。

顕在層に対する広告効果のみならず低関心層にもアプローチをし、これらの層に対する影響力も含めて、媒体評価をしていくことが大切だと感じています。

 

 

本当に効果に寄与したリーチは?

他にも本質的な投資を実現するにあたって、課題を感じるデータがあります。それは、ある事例で検証したメディアA、メディアBにおいて、一見メディアAの方がメディアBに比べてブランドリフト効果が高くても、実は同時に出稿していたテレビCMなどによる重複接触を除外した真の単独効果を見てみるとメディアBの方が効果が高かったという事例です。

これは、他のメディアのリーチによる影響を大きく受けているにも関わらず、レポート上ではその前後でリーチしたメディアに対し高い評価をしてしまう可能性があるということです。

ユーザーが態度変容や購買行動に至るまでにはさまざまな広告に接触しているケースがほとんどであり、本当に効果に寄与したリーチはどれなのかを慎重に見極める必要があります。

 

 

見られていないimpに流れる広告費

先日行った調査では、動画広告の視聴完了をしたユーザーのブランドリフト値が視聴完了をしていないユーザーよりも大幅に高くなる結果になりました。

リーチ単価の安い媒体が優先して選定されることが多いですが、レポート上のリーチ単価は安くとも、広告が少ししか見られていない分もコストに含まれてしまっているものが沢山あるとすると、実際には最終的に求めていた効果に対してのコスト効率は悪くなってしまいます。

リーチ単価が重要で、実際にその広告が見られたか見られていないかはそこまで気にしていないという方もいらっしゃいます。しかし、本質的な投資を実現するためには、単にリーチしただけではなく、視聴完了率など「しっかり見られているかどうか」を測る指標を評価することも重要だと考えています。

 

 

広告の本質的な投資の実現に向けて

iOSがアップデートされ、IDFAの利用が今後制限されるといわれています。そうすると、データで補足することが出来るユーザー数が減り、機会損失が起こり、広告効果が減衰してしまうのではないか。業界ではそのような懸念の声も聞かれます。

ですがこれは逆に、今までそこに頼りすぎて、表向きの指標を重視し効率だけを追求してきたということを見直す良い機会ではないかと思っています。データに頼るところはありつつも、先ほどお話した、顕在層や関心の高い層だけをすくい取って評価をして満足をしていないか、リーチしたユーザーはしっかりと広告を見ているのかなどといったセルフチェックをして、動画広告の本質的な効果を見極めるという発想や行動に、業界全体が転換していくことが出来ればいいのではないかと考えています。

 

広告主の本質的な投資を支援していくには、しっかりと見られる広告を作らなければなりません。ABEMAは、できるだけユーザーが「見せられている」と感じてしまうようなことをなくすような広告フォーマットを実現するため、コンテンツ視聴を邪魔しない表示タイミングや見せ方等の取り組みを続けており、その効果分析も恐らく業界でトップクラスの数を実施していると自負しております。この結果を今後の新たな商品開発にも活かしてまいります。

 

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大手新聞社3社による、動画広告市場攻略の新たな一手とは[インタビュー]

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成長を続ける動画広告市場、2021年は3889億円で前年比131.7%増と引き続き高い成長となることが予測されている

動画広告市場攻略に向けて、大手新聞社3社による新たな一手が先日公表された。朝日新聞社、産経デジタル、毎日新聞社は共同で、3社が新聞社ならではの視点で取材、制作したニュースを映像にして配信する動画コンテンツを一元的に視聴することが出来るサービスとして、「NewsVideo」を開設。3社の提供する動画にまとめてインストリーム広告を配信できる商品の提供を開始した。

この取り組みの背景や取り組みの狙いに関して、運営事務局にお話を伺った。

 

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下 智之)

 

-NewsVideo提供開始の背景についてお聞かせください。

新聞社はテキスト、写真のコンテンツが中心ですが、実は動画コンテンツも充実しています。そこをみなさんに知ってもらいたいというのが、各社の想いでした。

また、各社の編集の仕方や斬り口によって、同じネタ(ニュース)でも違った動画になります。新聞各社の動画がワンストップで見られるサービスは他にはなく、これまでにない面白い試みになるはずだと思いで合同のサイトを立ち上げることになりました。

 

-広告主はこのサイトにある広告在庫を指定して動画広告を配信することが可能なのですか?

 

NewsVideo内、各社サイト、YouTube上の当該チャンネルのインストリーム枠をパッケージで販売することを想定しております。

 

 

 

 

-YouTube動画広告を配信する形になるかと思われますが、具体的にどのような手続きにより広告配信が出来るのでしょうか?

Google DV360を用いる予定です。今後はより効率的な手法を検討中です。

 

-ビジネスモデルとしては、どのような座組になっているのでしょうか?

まずは、NewsVideoに参画したパートナーの動画により接触する機会を増やし、その動画コンテンツ内に表示されるインストリーム広告の販売を注力していきます。今後、サイト成長が見込めたところで、広告商品の充実や、サービスの幅を拡大させたいと考えております。

 

-動画コンテンツへのユーザー集客は各社が行われるのでしょうか?NewsVideoとして独自に実施されていくのでしょうか?

現時点では、パートナー各社からの集客を想定しております。

 

-今後3社による広告ビジネスのさらなる連携を予定されているのでしょうか?

3社と限定せずにパブリッシャーが主導となる連携は、広げていきたいと考えております。

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新生TVer広告が生まれた背景と目指す先[インタビュー]

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放送局による動画広告プラットフォームとして、動画広告市場において年々その存在感が高まるTVerは、2020年7月には大きく運営体制を大きく変えた。

運営事業者株式の第三者割り当てにより増資をして資本構成を放送局過半数へと変更。社名を株式会社プレゼントキャストから株式会社TVerとし、代表取締役社長にはTBS出身の龍宝 正峰氏が就任、各放送局や広告会社から広告事業を行う人材を集結させた。

同社はその後2020年11月にはTVer広告をリリースし、事業拡大を進めている。

この一連の流れにおいて、同社はどのような取り組みを目指しているのか。同社メンバーの方々にお集まりいただき、お話を伺った。

 

 

・広告営業部長 古田 和俊氏

・広告営業部 渉外グループ 中川 卓也氏

・事業企画推進グループ 谷内 健太氏

・広告営業部 広告開発グループ リーダー 矢部 怜史氏

・広告営業部 広告開発グループ 塩野 浩章氏

・広告営業部 広告開発グループ 遼平氏

 

 

TVer広告が生まれた背景とは

-TVer広告の概要と特徴についてお願いします

古田氏:1年ほど前からTVer PMPという形で商品提供をしてきましたが、新たに広告配信のロジックをTVer社が主導して開発を行った運用型広告商品として、2020年11月より提供を開始しました。

 

-この取り組みの背景についてお聞かせください

古田氏:もともとTVer向けに配信される広告商品は、当社の前身であるプレゼントキャストが担っていましたが、2020年7月に放送局主導で動画広告市場を盛り上げ、TVerとしてもこの市場で明確なポジションを取りに行きたいということで、改めて株式会社TVerが設立されました。今まではTVer社として広告主や広告代理店に対して営業活動は行われていなかったのですが、この度当社自身で販売することが出来る広告商品を開発して、これを放送局の営業部門も含めてお客様に直接ご提案をすることが出来るようにしました。

 

-TVer広告の提供が始まる前と後とで比べると座組はどのように異なるのでしょうか?

古田氏:今までTVerへ広告の買い付けをしていただいていたお客様は、今まで通りの方法で買い付けをしていただくことが出来ます。

2020年7月に新たにTVerという会社が出来、放送局出身のメンバーを中心に組織が出来ました。これにより広告会社の皆さまに直接ご提案をさせていただくことで、その幅を広げて、今までTVerで出稿をしていただいてこなかった新規顧客の開拓をしていきたいと考えています。

 

ファーストパーティーデータ活用で、コネクテッドTVにターゲティング配信

-TVerの広告在庫は、放送局による純広告としての販売、広告代理店主導のPMPとしての販売、そして2019年にリリースしたTVerPMPとしての販売と、TVer広告としての販売ということになるわけですね。その中でTVer広告は新たなチャネルとしてどのような新しさを打ち出していくのでしょうか?

中川氏:TVer社としてのミッションは、当社を通らない販売チャネルも含め、包括的にTVer全体の広告事業を拡大していくことです。

TVer広告は、自社でTVerのファーストパーティーデータを取り扱えるということが大きなポイントです。 広告商材の開発を自社で行っていくことが多くなり、これにより業界全体で新しいスキームを作りやすくなると考えています。

また今後の構想も含めて申し上げると、コンテンツが持っているデータや動画そのものに対して何かしらの付加価値をつけて提供することを目指しています。

現在TVerの広告は複数のチャネルから出稿することが出来ますが、その中でもTVer広告ならではの強みは、コネクテッドTVへの広告配信です。

コロナ禍において、コネクテッドTVの視聴者数は急速に伸び、動画再生数ベースではTVer全体の17%程度に達しています。この水準はPC向けの再生比率を超える所まで成長しています。

業界全体でも注目を集めているコネクテッドTVですが、広告配信に関連しての課題は、データが不足しているということです。

ですがTVerでは、アンケートに基づくユーザーの登録者情報を取得しておりますので、この情報を使い、誰が視聴しているかまで補足することが出来る精度の高いターゲティング配信が可能となります。

 

広告主がTVerに注目する3つのこと

-広告主からTVer広告に対して、どのようなことを期待されていると感じておられますか?

中川氏:セールスを開始して感じたことは大きく三つです。一つはコネクテッドTVへの配信です。

そして二つ目は、コンテンツジャンルごとのターゲティング配信です。特定の番組のジャンルだけに絞ったターゲティング配信に対する期待値は高いです。例えば、アニメだけに絞って、お子様をターゲットにした配信をするというような取り組みです。

ただしアニメというだけでは対象とする年齢層が絞り込めないので、これを絞り込むことが出来るようにコンテンツのメタ情報を活用して配信を行うというような取り組みについては、早急に目指していきたいと考えています。

そして三つ目はエリアのターゲティングです。全国の広告会社様からの問い合わせも非常に増えています。我々が取得しているユーザーアンケートをもとにエリア配信をすることが出来るため、例えば商材や商圏に合わせて特定の地域に配信する、あるいは特定の地域を除いた配信をするということが可能になります。

 

-コネクテッドTV向け配信は、普段テレビCMを出稿している広告主が主に興味を持っているのでしょうか?

古田氏:テレビデバイスへの配信についてはおっしゃる通りですね。テレビCMの補完的な役割としての活用に興味を持たれるケースが多いです。

 

サービス規模を拡大しより多くの広告主に出稿機会を提供

-動画広告の市場で事業を拡大されていくうえでの課題があればお聞かせください

古田氏:TVer自身について申し上げますと、まだまだユーザー数の規模における伸びしろがあります。さらにユーザー数を伸ばしていく必要があると認識しております。

矢部氏:広告商品としてより魅力を高めていくうえでは、ユーザー数の規模が求められます。データを活用して精度や広告効果を高めていく上でも、このことは必須です。

よりコンテンツを増やし、ユーザーを増やしながら、より広告効果の高い配信手法を開発していけるといいかなと考えております。

 

-大手動画プラットフォームとどのように差別化を図っていきたいとお考えでしょうか?

中川氏:コンテンツのクオリティーの高さがTVerの一番の強みであると考えております。TVerで流れている動画コンテンツは、放送局の基準に沿った厳しい審査を通ったものです。動画広告のクリエイティブもまた、事前に人の目で全てをチェックしております。ですので広告主の皆さまには安心してご出稿をいただけます。

また、コンテンツ内への広告の差し込みのタイミングについては、地上波と同じです。ユーザーに不自然さを感じさせないように行っておりユーザーの広告に対する許容度も高いと考えられます。

 

-今後どのような広告主の方をターゲットとしていこうとお考えですか?

古田氏:まずはTVerに出稿いただいたことがない広告主の方に出稿いただきたいと考えております。特に地方の広告主の方には、ぜひ一度お使いいただきたいです。

 

 

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アプリ広告業界エースが語る、マーケットの新局面[インタビュー]

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2020年にMoPub Head of Japanとして「2020年はアプリ広告業界にとって変革の年になる」と当サイトで語り、注目を集めた鈴木哲郎氏。

Facebook、Mopubと渡り歩き、次の活躍の場をアプリ計測ツールベンダーのAppsFlyer社へと移した。その理由や背景となる、同氏が身を置くアプリ広告業界の変化について、お話を伺った。

 

(聞き手:ExchangeWireJAPAN 野下智之)

 

  改めて自己紹介をお願いいたします。

AppsFlyer Japanの鈴木哲郎です。この4月よりセールス部門のDirectorとして新たに参画致しました。過去15年余りに渡りデジタルマーケティングやプログラマティック広告の業務に携わり、過去にはYahoo JapanやFacebookでも広告セールスやビジネスの立ち上げに従事してきました。Facebookにおいては日本オフィス最初の広告セールスとして入社し、広告事業のスタートアップをおこなった後、シンガポールにあるアジア本社に移り、ゲーム広告主のキャンペーンやアプリパブリッシャーのマネタイズを担当しました。

直近では今年の4月までTwitter傘下のサプライサイドのプラットフォームであるMoPubにて、Head of Japanとして日本市場での拡大の指揮を務めておりました。

 

 

前職の事業は急成長を遂げておられる時期であったようにも見えます。なぜこのタイミングで、転職を考えられたのでしょうか?

AppsFlyerへの参画を語るにあたって、まず私とAppsFlyerとの出会いからお話をさせてください。遡ること7年前。まだAppsFlyerの日本法人ができる前に、現アジアManaging Directorを務めるRonen Menseと話す機会がありました。その際にAppsFlyerのビジネスの説明とデモ画面を見せてもらい、アトリビューションツールの観点からプロダクトが非常に良くできており今でも鮮明に覚えているほど印象深いものでした。当時私はシンガポールでFacebook広告の市場拡大に関わっていた為チームを離れることはできなかったのですが、AppsFlyerのことはずっと頭に残っておりいつか機会があればと考えていました。

その後、ヤフー時代の上司であった大坪(現AppsFlyer Japanカントリーマネージャー)が参画したこともあり、前職でも一緒にマーケティング活動やウェビナーを行うなど、コミュニケーションは続いていました。

転機となったのは昨年のことです。2019年より参画したMoPubはおかげさまで1年余りの間で大きく成長を遂げることができました(2020年6月記事参照)が、その間に業界には大きな2つの変化があり、AppsFlyerとそのビジネス領域への関心が膨らんでいきました。

変化の1つ目はコロナ禍がもたらした働き方や、ユーザーのアプリ利用に対する可処分時間の変化がもたらしたデジタルマーケティングにおける環境的変化です。もうひとつは現在進行系で起きているAppleのATTの開始などに代表される構造的変化です。

特に後者は既存のデジタルマーケティングのルールセットを変えざるをえない大きな局面を今まさに迎えようとしています。このデジタルマーケティングが転換期を迎えるタイミングで、渦中にあるモバイルアトリビューションの分野に大きなビジネスの機会を感じ、数年間抱き続けてきたAppsFlyerへの思いに火がつきました。

また10年前、まだモバイルアプリも存在せず、バナー広告やリスティング広告が主流であったデジタル広告の黎明期にともにビジネス成長に奔走した大坪と、この大きな変化の渦中で再びタッグを組めることに不思議な縁を感じております。今後AppsFlyerから業界を一緒に盛り上げていくことができると思うと非常に楽しみです。

自分のチャレンジのために、好調なビジネス成長期にも関わらず、途中で去ることになってしまったMoPubのクライアントの皆様にはご迷惑をおかけし、非常に申し訳なく思っております。また別の機会において、皆様のお役にたちたいと思っております。

 

 

AppsFlyerでの鈴木さんの新しい役割についてお聞かせください。

弊社には様々な業界から集まった経験豊富なセールスがおります。Directorとして彼らをリードし、イノベーティブなAppsFlyerのソリューションを市場に紹介していくとともに、日本市場でのビジネスをさらに拡大していくのが私の役割です。

私自身、今まで15年あまりに渡り変化の早いアドテク業界の中で代理店や広告プラットフォームなど様々な立場で経験を積んできました。特にFacebookやTwitterなどプラットフォームでは、広告主様と直接お話をするデマンドサイドから、媒体の収益化を後押しするサプライサイドまで両方のソリューションに携わる機会をいただきました。

御存知の通り、アドテクの世界においてデマンドサイドとサプライサイドはコインの表と裏のようにお互いが関係しあい複雑な広告エコシステムを支える根幹となっており、この中で経験し身につけてきたことが、モバイルアトリビューションを提供するAppsFlyerの成長をさらなるステージへと進めることができると自負しております。

 

AppsFlyerのみならず、アプリ広告業界の計測ツール事業者は、AppleのIDFA利用制限に端を発する不透明な環境変化おいて、最も影響を受けている立ち位置であると思われます。貴社として、現状をどのようにとらえておられるのでしょうか?

最も影響を受けている、と言われることも確かにあるのですが、実はAppsFlyerはそこまで影響を受けてはいないんですね。確かに、計測ツール各社にとってAppleのIDFA利用制限に伴う変更やSKAdNetworkという広告効果を測る新たな審判の登場は影響が多いと思いますし、環境変化についても未知数の部分があると言えます。しかし、実は弊社ではAppleの発表が行われた何年も前からユーザープライバシーを重要視し、最も優先すべき事項としてこの領域に投資を続けてきました。Appleが先日フィンガープリントを利用している計測SDKを理由にアプリのアップデートを拒否しましたが、弊社のSDKが一切拒否されなかったのは、弊社がフィンガープリント技術を利用せず、すでに確率論的モデリング(Probabilistic Modeling)に移行していたからです。

振り返ってみると、この10年でテクノロジーの発展とともにマーケティング活動において多くのことが可能となりましたが、ユーザーのプライバシーへの配慮よりも、技術の発展が優先されてきた部分は否めません。改めてユーザープライバシーを重視する方向へ舵が切られるのは当然の流れだと考えています。

弊社が2月にビジネスサービス・ソリューションの評価を行うG2において、すべてのマーケティングプロダクトの中でNo.1の評価をいただいたのも、継続したプロダクトへの投資に加え、我々のユーザープライバシーを重要視した方向性を評価していただいた結果だと理解しております。

今回の環境変化は、私たちが行ってきた取り組みをエコシステムの中の皆さんに知っていただけるいい機会だと考えています。

 

AppleのIDFA利用制限に関わる変化において、業界内の計測ツール事業者はすべて同じ方向性に対応のかじを切られているように見受けられますか?それとも、それぞれ独自の方向性を目指しているのでしょうか。もし後者の場合、貴社はどのような方向性に向かわれるのでしょうか?

少し先にも触れましたが、同じように見える方向性も、実は各社によって大きく異なります。ユーザーがIDFAの利用を許諾しなかった場合でも、一部の計測事業者はフィンガープリンティングを使ったユーザーの特定を行っていましたが、AppsFlyerは、ユーザーを特定しない確率論的モデリングを導入しています。これは単純に計測に関わる技術の違いということではなく、IDFAが取得できなくなったとしても引き続きそれ以外のユーザーデータを利用して特定を行っていくか、それともユーザーデータ以外のアプローチを用いて広告パフォーマンスの測定を行うのか、根本的なデータポリシーに関わるスタンスの違いだと言えます。

また、SKAdNetwork(以下SKAd)についても各社の対応状況は異なります。ご存知の方も多いと思いますが、SKAdというのはAppleが提供する新しい効果計測の仕組みです。

今後、基本的には従来通りの測定方法とSKAdを使った測定を併用してパフォーマンスを測っていくことになると思いますが、現状では連携済みのSKAd対応メディア数は各社によってもステータスにまちまちです。また、SKAd自体にはAppleから専用の管理画面が提供されないためそれぞれのメディアにアクセスして成果の確認を行う必要がありますが、このインターフェースの提供も計測ツール各社によって対応状況が異なります。AppsFlyerではSKAdの利便性を高めるために、専用の管理画面もどこよりも早く準備を行い、弊社のプラットフォーム内で従来どおりお使いいただくことが可能です。

進化をし続けるこの業界において、弊社としては今後も普遍的な方向性として何よりもユーザーのプライバシーとデータ保護を優先すべきだと考えます。弊社では「データの正確性」「コミットメント」「プライバシー・セキュリティ」「公平性」という創業以来最も重要に考えている4つの柱がありますが、今後もこの4つを中心にマーケターの皆様を支援していきます。

 

 

IDFAの一連の対応において、アプリマーケターがいまするべきこととして、何かアドバイスが出来ることがあればお聞かせください。

まずは現在行っているマーケティングフレームワークを今一度見直してみることをお勧めします。これまでは、アプリマーケティングにおいてはユーザー獲得並びにリエンゲージメントにおいて「定石」とも呼べるアプローチがありました。しかしそれらは基本的にIDFAをベースとしたもの。つまりATTポップアップでユーザーがNoを選択(オプトアウト)した場合、その方法は活用できないことを意味します。

なぜユーザーはNoを選択するのか。先日AppsFlyerが発表したレポートにそのヒントがあるように思います。これはATTポップアップをテスト的に実装したアプリでどのくらいのユーザーがオプトインするのかを統計的にまとめたレポートで、平均して41%のユーザーがオプトインしたというデータが出ているのですが、それ以上に興味深いのは、アプリのジャンルによってそのオプトイン率が全く違うことです。ユーティリティジャンルは平均以上の45%という高いオプトイン率を出す一方で、ソーシャルカジノゲームは21%という非常に低い率となりました。

これは、ユーティリティアプリが他で代替できない価値を提供し、そこにユーザーとのエンゲージメントが構築されていたからではないかと思うのです。一般的にカジノゲームをプレイするユーザーは「勝負に勝つ」ことを至上命題としており、必ずしも「そのアプリ」でないといけないわけではありません。また同様にカジュアルゲームもオプトイン率は25%と低かったのですが、やはりそのゲームでないといけない理由が少なかったのかもしれません。オプトイン率を上げるためには、ユーザーに代替不可避な価値を提供すること、そしてその体験を通じてユーザーとのエンゲージメントを深めていくことが肝になってくると思います。

ユーザーエンゲージメントを高めるのは、何もアプリの中だけとは限りません。ウェブ上でも行えますし、オフラインでも行えるでしょう。一度既存のフレームワークを破壊し、アプリやスマートフォンの中で閉じないアプローチを通じて、ユーザーとコミュニケーションを行ってみることを考えても良いのかもしれません。

また効果計測においても、SKAdNetwork(以下SKAd)という従来存在していなかった計測システムが登場します。ATTに同意したユーザーもしていないユーザーも成果を計測できる点においては素晴らしいのですが、従来我々のようなMMPが提供していたようなROASやLTVの計測はSKAdにおいては行うことができません。多くの広告主は、KPIとしてROASやLTVを追っていらっしゃったと思いますが、そのデータをSKAdでは取れないということです。またSKAdではデータもリアルタイムではなく、24時間以上経ってからのレポーティングとなります。ただ幸いなことに、多くのメディアが従来の計測方法にも対応しており、SKAdでしか計測できないのはFacebook、Google、Twitterなど一部のメディアのみになります。ですので、SKAdと既存のMMPによる計測を使い分け、またよりシンプルなKPI(CPIなど)を導入するなど、組織としてのゴール設計をこの機会に見直してみるのも検討する価値のあることだと思います。

 

個人として、またAppsFlyerとして今後注力していかれたいことについて、お聞かせください。

ここ10年ほどのデジタルマーケティングの歴史において、アトリビューションの仕組みとあり方にここまで注目が及んだことは初めてだと思います。そして、その中でAppsFlyerが変わらず取り組んできたユーザープライバシーへの取り組みについて、エコシステムの中にいる皆様に理解していただける、まさにそのタイミングがきました。

先に述べたように弊社としてのスタンスは今後も変わりません。常に中立の立場で、公平性・透明性とプライバシー・セキュリティを保ってパフォーマンスを計測する真のアトリビューションプロバイダーとして皆様のサポートをすることです。

また、個人としては今まで経験した国内外でのデジタルマーケティングのノウハウを活かし、クライアントの皆様のビジネスの成功に役立てたいと考えています。

具体的に申し上げると、以前働いていたFacebookでは、海外に在籍しながら日本の広告主様のグローバル展開のお手伝いや、海外企業の日本進出のサポートをしてきました。

その際、海外から見た日本、日本から見た海外など多くの視点から物事を客観的に捉えることが求められ、この視座を持つことがクライアント様の成功にとって重要な役割を果たしてきました。

コロナ禍により日本でもデジタルトランスフォーメーションが進み、今は物理的な移動は制限されているものの、ビジネスにおいては海外との垣根は低くなったと感じます。アフターコロナにおいても日本企業の海外展開やインバウンドビジネスの需要は更に拡大が期待されます。

そういった中で自分が経験してきた様々な局面を結晶化できるタイミングだと感じております。そして、広告主とパブリッシャーからも一歩離れた中立な立場からものごとを俯瞰し、計測を行うアトリビューションの立場だからこそ、皆様に提供できるバリューがあると考えています。

冒頭で申し上げたとおり、今まさにデジタルマーケティング業界は大きな局面を迎えています。このビッグウェーブを様々な立場の皆様と一緒に手を取り合い、チューブをくぐっていきたいと思っています。

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デジタルマーケティングへ取り組むきっかけに-SO TechnologiesのMEOビジネス戦略

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SO Technologiesは2019年3月より、Google マイビジネスの運用サポートツール、ライクル GMB(ライクル)の提供を開始した。同社ではGoogle マイビジネスの公式認定パートナーとして、Googleマイビジネスを始める際のボトルネックの解消など、デジタルマーケティングに取り組み始める地方中小企業のハードルを下げたサービス提供をしている。

同社の事業概要と今後の展望について、同社の名古屋和也氏に話を聞いた。

 

地方中小企業にデジタルマーケティングで「稼ぐ力」を

―貴社の事業概要についてお聞かせください。

SO Technologiesは「稼ぐ力をこの国のすみずみまで。」をミッションに掲げ、地方の中小企業やその関連企業を対象にデジタルマーケティングのサポートをしています。主たる事業としては2つあり、ATOM(アトム)という運用型広告のレポーディングを自動化するツールの提供、CUSTA(カスタ)というインターネット広告のオペレーション代行事業の提供をして来ました。

今回のインタビューでお話させていただく「ライクル」はいわゆるMEOサービスとなりますが、当社の中でも一番新しい事業となります。SO Technologiesが提供してきたサービスは広告が主なチャネルでしたが、本サービスではSNSやマップといったチャネルを対象としており、新たな分野でデジタルマーケティングを支援していくこととなりました。

 

―ライクルの提供を開始した理由をお聞かせください。

ミッションに基づき、当社では地方の中小企業を基本的なターゲットとしながらデジタルマーケティングをサービスとして提供したいという想いがございました。その前提のもと、地方の中小企業が持つ強みは何か、と改めて当社で考えた際に、地場に根づいた店舗やネットワークを持っていることでは無いかという答えに行きつきました。

そのような形で社内での議論を続けるなか、事業機会としてGoogle マイビジネスのニーズも加速度的に広がって来ました。この当社のやっていきたいこととニーズが加速したタイミングが重なったことを背景として、Google マイビジネスを使った事業展開をしていくことに決まりました。

 

 

Google マイビジネスを始める際のボトルネックを解消

―ライクルの特徴や強みはどこにあるのでしょうか。

地方の中小企業の方にはライクルをきっかけとして様々なデジタルマーケティングを始めてもらいたい、という提案をさせていただいております。そういった意味では、他社サービスのコンセプトは異なる箇所もあるかしれません。

実はGoogle マイビジネスを始めるためには、自身が実店舗のオーナーであることの認証作業が必要となります。この認証作業というのが非常に手間で、Google から店舗に送られてくる認証作業に必要なハガキがうまく届かないなど、新たにビジネスを始める人のボトルネックになっています。

そこで当社ではGoogleと公式でパートナーシップを結ばせていただいているため、一部条件さえクリアしていれば、ハガキ等の認証作業を行わずにGoogle マイビジネスの利用が可能となります。Googleとこのパートナーシップを結んでいる企業は自社を含めて日本では3社だけ(2021年3月時点)となるため、MEOビジネスをこれから始めるお客様の安心感にもつながっております。

MEOは根の詰めた設定や対策を行おうとすれば出来ることは非常に多いのですが、ライクルのコンセプトはそこではありません。まずはGoogle マイビジネスを始めるためのボトルネックを解消すると共に、最低限の設定や対策を安価な値段で開始していただくことを狙いとしております。セールストークとしても「Googleで貴社の店舗を検索した際に、正しい情報が掲載されているほうが良いですよね」とシンプルな形で提案させていただいていますが、これは企業の方々にとっても納得のしやすい話になるのではないかと思います。

その結果、当社のサービスを利用した方には「デジタルマーケティングは難しいものではない」という意識を持っていただければ嬉しいですね。

 

―具体的にはどのような企業が利用していますか。

飲食店や小売の企業様は、店舗を持っている事業者の中では規模感も大きいので、取引会社数の多くを占めております。 そのほかではカーディーラー、学習塾、クリーニングショップ、トランクルームといった企業様にご利用いただいております。珍しいところでは、地方の畳屋さんや工務店さんとも取引がございます。

 

-業種の幅の広さからも、MEOの浸透度合いや理解度の高さがうかがえますね。

先ほど申し上げたシンプルなセールストークもありますが、MEOに関して皆さん理解を示していただけます。また、他の企業では飲食店や歯医者など、顧客企業の業種が限られてくることも多いですが、当社の場合は業種に関係なく、様々な業種の企業をサポートしていることも特徴の一つではないかと考えています。

 

コロナ禍でニーズが高まるMEOサービス

―注目されている業界動向はございますか。

Google マイビジネスをベースとしたツールベンダーや運用代行会社が近年になり非常に増えてきていると感じています。そういった意味では、どういった特徴や強みを持ってお客様にサービスを提供できるかというのは、今後もより明確にしていく必要が出て来ました。

業界にいる1プレイヤーとしては、新型コロナウイルスがMEOや店舗を持つ企業のビジネスにどれだけ影響を及ぼすのか、或いは消費者の行動にどういった形で影響が出てくるのかという点は、分かってきた部分と未だに読めない部分がそれぞれあるので、今後も注目していきたいと思います。

 

-分かってきた部分と読めない部分とは具体的にどのような点になりますか。

分かってきた部分としては、当社としても新型コロナウイルスの影響でMEOの需要が急激に冷え込んでしまうのかと想定していたのですがそのようなことはありませんでした。Google マイビジネス自体がテイクアウトの有無や店員の検温有無を掲載するようになるなど、このコロナ禍に対応してきたこともあり、よりサービスニーズが喚起されるようになりました。

読めない部分でとしては、店舗事業者側での販促費の存在があげられます。販促費がこれから増えていくのか減っていくのか、言い換えれば集客に対して実店舗を持つ企業がどれだけ注力をしていくかは、密への対策も含めて事業者自身も悩まれているとこなのではないでしょうか。今後はGoogle マイビジネスも実店舗を持つなら必ずやったほうが良いとはならず、業種によってはあまりお勧め出来ない店舗も出てくるなど、そういったことも起こりうると想定しております。

 

コロナ禍でニーズが高まるMEOサービス

―今後の展望についてお聞かせください。

市場感としましては、Google マイビジネスを利用したいというお客様は増えている状況かと考えているので、そういったお客様に関しては引き続き当社側でご支援できればと思っています。一方、市場環境の変化としては競合他社の増加や販促費の減少も踏まえて、当社のポジショニングはより明確にしていかなければならないと考えております。

当社でも本当に様々な業種・業態のお客様をご支援させていただいた実績があります。ただ、運用や施策をしてきたなかでは上手く行ったケースもあれば、施策としてうまくいかなかったケースもありました。これらのケースを業種等で分析していくことにより、業種別の具体的な支援や具体的な施策をご提案できるような状態に持ていくことをまずは目指していきたいと思っております。

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LINEマーケットプレイスが進めるLINE公式アカウントのバリューアップと民主化[インタビュー]

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LINEは昨年10月にLINE公式アカウントを活用してマーケティング活動を行う広告主向けに、LINE APIと接続できるアプリケーションをオンラインで提供するLINEマーケットプレイスを開始した。

この取り組みの背景や狙いについて、同社マーケティングソリューションカンパニー 広告・法人事業本部 プラットフォーム事業開発室 室長 高木 祥吾氏にお話を伺った。

 

※LINEマーケットプレイスはこちら

 

聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下 智之

 

 

-貴社広告ビジネス全体の現状をお聞かせください。どのようなところに注力されていますか?

現在LINEの広告ビジネスにおいては、大きく3つの柱があります。一つは現在成長エンジンになっている運用型広告のLINE広告。そして二つ目はLINEならではのものとしてLINE公式アカウントがあります。三つ目は、販促領域における広告商品です。この領域では店舗施策と絡めた様々なキャンペーンを実施できるソリューションの提供をしています。

そしてこれらの三つの領域の中で、それぞれのプロダクトをつなげて掛け合わせることで相乗効果を出そうとしているのがここ数年の取り組みです。

例えばLINE広告を使ってLINE公式アカウントの友だち数を増やすことが出来るというような、プロダクト同士の融合を開発の注力領域に据えています。

今後は、広告主がLINEのプラットフォーム上でマーケティングにおける認知から理解を促進でき、さらにはそのまま予約や購買などのコンバージョンまでを完結することが出来るような世界観を作っていくのが大きな方向性です。

 

LINE公式アカウントのコアバリューとLINEマーケットプレイスの役割

-LINE公式アカウントについて、詳しくお聞かせください。貴社広告ビジネスにおいてどのような位置づけにありますか?

LINE公式アカウントはマーケティングファネルで言うと比較的深い部分を担っているところに価値があると私たちは認識しております。LINE広告等でユーザーに広告主のサービスを幅広く認知させて、LINE公式アカウントで友だち登録をしてもらい、その後ユーザーとLINE公式アカウント上で広告主はコミュニケーションを取ることができます。LINE公式アカウントのコアバリューは、企業とユーザーとがOne to Oneでつながり、LINE公式アカウント上でやりとりをしながら、企業のサービスを届けることが出来るという点です。

LINE公式アカウントのビジネスモデルは、数年前に大きく変わりました。それまでは大手広告主向けのプランとLINE@という店舗向けプランとに分かれていましたが、それらを統合し、料金プランも3つにシンプル化させました。

この時のプラットフォームのリデザインが基盤となり、LINE公式アカウントと、広告、販促の領域との掛け合わせにより新しい媒体価値を出しやすくなりました。

現在、LINE公式アカウントのアクティブアカウント数は27万アカウント(2021年3月時点)です。コロナ禍で飲食店様などのお申込も増え高い水準で伸び続けています。

※アクティブアカウント:認証済みアカウントのうち、月に1度以上機能を利用しているアカウント数

 

-LINEマーケットプレイスについてお聞かせください。概要からサービスの開始の経緯も含めてお聞かせください。

 LINEマーケットプレイスは、2020年10月にローンチした、LINE公式アカウントとAPI連携が可能なアプリケーションを、LINE上でマーケティング活動を行う主に中小企業の広告主に対して提供するプラットフォームです。

広告主は、LINE上でより便利にマーケティング活動をするためのアプリをLINEマーケットプレイス上で購入し、独自開発不要でオンラインからこれを活用することが出来ます。

これまで広告主は、LINE公式アカウントを当社が管理画面上で提供していた以上の機能を求める場合、API接続をして機能を自社開発するか、関連するツールやソリューションを提供している企業に導入の依頼をするなどの対応を取る必要がありました。大企業であれば予算を獲得してMAツール等と接続して活用することが出来ていましたが、予算が限られる中小企業の広告主の場合、なかなかそこまでの対応をすることが難しい状況でした。

また、これまで外部のツールを活用する場合、広告主は要件定義を行って見積もりを取り、契約書を交わしてAPI接続を行うなど、意思決定から利用開始まで一定のリードタイムを要していました。

このような手間を省くとともに、これまで届いていなかった主に中小企業の広告主に対して、より便利にLINE公式アカウントを使ったマーケティング活動をしていただきたいという想いが、LINEマーケットプレイス開発の背景です。

シンプルで簡易な機能を低コストで求めているような、中小規模の広告主をターゲットとしています。

 

 

-LINEを活用するマーケター向けに、既にどのくらいのアプリケーションが提供されているのでしょうか?

現在掲載アプリ数は19アプリ(2021年5月時点)です。アプリを提供する企業は、スタートアップ企業や、元々中小企業の広告主をターゲットに比較的低価格でマーケティングソリューションを提供していた企業などが多いです。広告主がLINE公式アカウント上で利用する用途に応じていくつかカテゴリーを設けており、「イベントで利用する」、「注文を受付する」、「予約を受付する」というようにアプリが並んでいます。

 

LINEマーケットプレイスが目指すこと果たす役割

-LINEマーケットプレイスは貴社のビジネスにどのように寄与していくのでしょうか?

LINE公式アカウント自体はLINEの広告ビジネスにおける強みとして位置付けられます。

LINEマーケットプレイスの開設で、広告主にとってのLINE公式アカウントの可能性を広げるためのツールを提供し、LINE公式アカウントの利用用途が増えれば、広告主のLINE公式アカウントのビジネス活用がますます高まります。これにより広告主による広告も含めたLINEプラットフォームの活用機会が高まることを期待しております。

あくまでメインの目的はLINE公式アカウントの活性化への寄与ですが、プラットフォームのエコシステムとして、パートナー様にLINEマーケットプレイスにツールを掲載していただくだけではなく、私たちとしてはLINEマーケットプレイス自体での収益も得ています。パートナー様のアプリ販売額に応じたレベニューシェアや、掲載費用をいただくというようなビジネスモデルによるものです。

 

-ビジネス面で既にインパクトはありますか?

収益の面ではまだ限定的です。私たちが今重視しているのは、LINEマーケットプレイスに出品していただいているパートナー様のアプリがしっかりと使われるような世界観になるということです。

ですので、LINEマーケットプレイスのアプリを活用しているLINE公式アカウントの数を増やすことはもちろんですが、まずはLINEマーケットプレイス自体の認知を高めていきたいと考えています。

 

-貴社のLINEマーケットプレイスの取り組みは、広告会社になんらかの影響をしてくるのでしょうか?

LINEマーケットプレイスでは、LINE公式アカウントの運用サポートパックというものを提供しています。

LINE公式アカウントは、開設後の運用がとても大切です。そのためのパッケージを広告会社様に準備していただき、これをLINEマーケットプレイス上に出品していただいています。

飲食店の店舗や美容室が、「LINE公式アカウントを使い始めたが、何からやればいいのかわからない。」というような課題を持つときに、LINEマーケットプレイスを通して広告会社のサポートを受けることが出来るようになっています。

このような広告代理店のサポートパックがLINEマーケットプレイス上で提供開始されたのは2021年1月です。参画していただいているのは現在、比較的大手企業向けにサービスを展開されている代理店に限定されていますが、今後より広くご参画いただきたいと思っています。

中小企業の広告主のマーケットでは、自社でツールを持っていて、自社のツールでLINE公式アカウントの運用支援を行っている広告会社が数多くいらっしゃいます。今後はそのような広告会社が増えてくるでしょう。

 

-貴社としてどのような方にLINEマーケットプレイスをプロモーションされていかれたいのでしょうか?

LINE公式アカウントを既に使っていただいている広告主や、これから使おうとしている広告主の方にLINEマーケットプレイスを認知していただき、使い方をご理解いただけるように努めています。

またLINEマーケットプレイスとしては、掲載するアプリのバリエーションを増やしていきたいです。そのために新たにアプリを提供していただける企業への認知も広めたいと考えています。

既にお使いいただいている広告主様も多数いらっしゃり、業種も飲食店や美容室、教室などと幅広くなっております。

 

-LINEマーケットプレイス上でどのようなアプリの人気があるでしょうか?

業種を問わず汎用性のある予約アプリが今一番人気であると感じております。あとはモバイルオーダーです。

アプリの利用料は、最も安いもので現在月額3000円からとしています。

  

-今回のお取組みについて、最後に何かメッセージがありましたらお聞かせください。

私が個人的に思っているのは、これらの取り組みはLINEというプラットフォーム自体のDXであるということです。これまで広告主がLINEでより高度なマーケティングや追加のサービス機能提供を行うにあたって必要だったコストの削減とプロセスの簡略化を実現し、かつ民主化したというようなプラットフォームであるともいえます。

LINEマーケットプレイスのコンセプトは「LINE公式アカウントをもっと便利にもっと手軽に」というものを掲げております。

今まで手が届かなかった広告主の方にもアプリを使っていただけるような環境をご用意することが出来ましたが、これを今後も伸ばしていきたいと思っています。

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“広告主ドコモ”で感じた課題解決策を広告商品に[インタビュー]

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広告業界において、NTTドコモといえば、日本で一二の規模を争う広告主最大手と、媒体社大手。この二つの顔を持つ。

今年4月に同社がリリースした「ドコモ広告 セールスプロモーションPKG(パッケージ)」という広告商品は、この商品の担当者がかつて広告主の立場にいた頃、課題に感じていたことの解決策となり得るようなものであるという。

いったいどのような商品であるのだろうか。その特徴や、開発の背景について、同社広告ビジネス担当加藤 翔氏にお話を伺った。

 

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下 智之)

 

 

-この広告商品の概要についてお聞かせください。

ドコモ広告セールスプロモーションPKG(パッケージ)は、8,000万人を超えるdポイントクラブ会員様の実購買データを活用して、ドコモ広告やFacebook、Twitterなどへの広告出稿と、出稿したターゲットの実購買の効果検証ができるサービスです。

従来のデモグラ情報や位置情報などを活用した広告配信に加えて、「dポイント」および「d払い®」加盟店が保有する購買データを活用した配信やドコモデータを活用して購入しやすいユーザーを類推拡張した広告配信も可能となります。

また、広告配信から来店、購入までをドコモのIDで分析ができるため、広告効果の可視化による効率的なマーケティングが実現可能となります。

 

-商品提供開始の背景についてお聞かせください

「広告が本当に購買に結びついているのか?」、「どういったユーザーが購入をしてくれているのか、キャンペーンで反応をしてくれたのか?」、「今回の結果を踏まえて次回のキャンペーン設計はどうしたらいいのか?」といった広告主がもつ従来からの課題を解決したいという想いが商品開発のスタートでした。

私自身、ドコモでお客様向けサービスのプロモーションに携わる機会があり、広告のインプレッションやクリック数、新規会員の増加数などを見ることはできるものの、実際にどんなユーザーが獲得できているのか、実際の購入までつながっているのか、次回キャンペーン設計はどうしたらいいのかと苦慮した広告主としての経験も思いに至った要因の1つです。

このような想いからドコモのIDを基に、広告から来店、購買までID単位で効果を可視化する本商品の提供に至りました。

 

-配信先の特徴についてお聞かせください

1つ目はドコモが運営するポータルサイト「dメニュー®」をはじめ、ニュースアプリ、メールアプリなどブランドセーフティな面に加えて、新たにdポイントクラブというdポイントとの親和性が高い面での配信が可能です。

2つ目は店舗への送客の最後の一押しを支援するためにLIVE BOARD社のDOOH(デジタル屋外広告)やユーザーのリアルタイムな位置情報データを活用して「いま、その場にいる方に」情報をお届けすることができるメール型広告媒体の「メッセージS®」があり、オンオフ統合でのアプローチが可能となります。

3つ目はFacebook、Twitterなどドコモメディア以外へドコモデータを活用した配信が可能となっています。

 

-想定する顧客ターゲット層についてお聞かせ下さい

メインはコンビニやドラッグストア、スーパーで商品を展開されているメーカー様です。

「自社商品を購買されているお客様像が分からない」、「施策が単発で終わってしまい次回施策につながる示唆が得られない」など自社で会員の属性データや購入者データを持っておらず日頃のマーケティングに課題感を持っているメーカー様を想定しております。

 

-広告会社が広告主に提案する上での押さえておくべきポイントをお聞かせください。

これまでご紹介したユーザーボリューム数や配信面、広告から購買まで分析できるという点に加えてさらに3つのポイントがあります。

1つ目は広告主様が加盟店を介さずに消費者に対して直接dポイントを進呈するインセンティブ施策を実施することが可能になり、ターゲットやタイミングを任意に設定して効率的な販促支援が可能です。

2つ目はドコモのIDはサードパーティcookie規制やITP規制を受けないIDであるため、今後も継続してPDCAサイクルを回して、マーケティングの効率化をご支援することが可能です。

3つ目はドコモのデータはしっかりとユーザー様から許諾を頂いたゼロパーティーデータであるため、広告主様や広告会社様にも安心してご利用いただけるデータとなっています。

 

-今後、どのように商品を展開させていかれる予定でしょうか?展望をお聞かせください。

オンラインからオフラインまでトータルでご支援をさせて頂くために、配信先メディアの拡大はもちろんのこと店頭での最後の一押しのために店頭の棚やサイネージまで連動した商品の検討をしています。

これによりお客様の購買活動にあわせて、最適なタイミングで最適なご提案をさせて頂き、お客様にとっても広告主様にとっても、加盟店様にとっても喜ばれる商品にしていきたいと思っております。

 

 

 

 

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YouTubeに出稿する全ての広告主へ-ZEFRが目指す、動画広告運用の価値向上[インタビュー]

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成長を続ける動画広告市場において、王道を行くのは紛れもなくYouTubeであることは疑いの余地はない。動画広告を出稿するほぼ全ての広告主が出稿するYouTube上で、クリエイティブ以外の領域で、広告運用の差別化を行うのはなかなか容易ではない。

三井物産とLegolissが日本に持ち込んだZEFRというサービスは、広告主や広告代理店の動画広告運用の現場を大きく変える素地を持っているようだ。

このプロダクトを日本で展開することになった背景やその特徴、広告主や広告代理店にとってのメリットなどについて、三井物産株式会社 ICT​事業本部 デジタルマーケティング事業部チームリーダー 杉山悠介氏、株式会社Legoliss取締役 中嶋 賢氏(以下ケニー氏)、同プロダクトソリューション事業部 アカウントマネージャー 吉田 三璃氏(以下ミリ氏)、同 小西未紗氏(以下ミサ氏)にお話を伺った。

 

(聞き手:ExchangeWireJAPAN 野下 智之)

(Sponsored By Legoliss)

 

-自己紹介をお願いします

杉山氏:三井物産ではICT事業本部デジタルマーケティング事業部に所属しています。主に広告・マーケティング・CRMの領域で海外の先進的なテクノロジーやソリューションを日本で展開する役割を担って、これに伴うパートナー企業への出資業務なども合わせて担当しております。

新卒で博報堂に入社し、10年半ほどを過ごしました。この間は営業に8年、新規事業開発に2年を費やし、デジタルには深く関わってまいりましたが、2019年に三井物産に入社しました。

 

ケニー氏:大学卒業後に米国留学し、帰国後にはまず鉄鋼企業に入社しました。その後に現在のユナイテッド、当時のインタースパイアに参画し、モバイル広告業界で長年ビジネスを経験してきました。

次にキャリアの場を移したのは、2012年。この頃モバイル広告の需要はガラケーからスマートフォンへと移行する時期で、私自身も次のキャリアを模索し始めました。まさにアドテクの隆盛期で、日本ではフリークアウトが初めてRTBによる広告取引を始めました。ご縁あって友人からの紹介を受け、同社に参画することにしました。その後、フリークアウトの上場直前に人材企業大手が新規事業として立ち上げたアドテク企業のマーベリックへ参画し、5年強のキャリアを経て2019年7月にLegolissへ参画しました。

 

ミリ氏:私は、大学での米国留学時に現地のキャリアフォーラムで知った国内大手DSPに新卒で入社しました。広告運用と営業を4年弱経験したのち、2019年に三井物産に転職し、Legolissに転籍して現在に至ります。現在Legolisを通して三井物産が海外からソーシングしてきたプロダクト全ての営業、また運用まで総合的に担当しています。

 

ミサ氏:私は今年の4月に新卒でLegolissに入社し、現在は営業を担当しています。

 

 

日本の動画マーケティングで、いまZEFRが必要な背景

-三井物産とLegolissとの関係性について改めてお聞かせください

杉山氏:三井物産は2019年にLegolissを子会社化しました。これまで三井物産はデジタルマーケティングの領域では20年ほどビジネスを行ってまいりましたが、2019年頃からデータを使ったマーケティングで企業を支援していくビジネスに注力をしており、その中核となる会社としてLegolissを位置づけております。

 

-ZEFRをこのタイミングで日本に持ち込まれた背景についてお聞かせください。

杉山氏:三井物産はデジタルマーケティング領域で事業を進めていく中で、ここ数年は海外から先進的なデータ関連のソリューションやテクノロジーを持ってくるビジネスを進めています。これまでもクロスデバイスのTAPAD、ジオターゲティングのFactual(現:Foursquare)などの日本展開を支援していましたが、これらに続く新しいソリューションを探していました。

近年成長著しい動画広告市場を見ていて、この市場成長を取り込むビジネスに取り組むことができないか、そして昨今のプライバシーにかかわる個人データの利用規制をビジネスチャンスに変えられないかという二つの軸から、新しいソリューションを探しておりましたが、ZEFRはこの二つの条件を満たしておりました。

ZEFRは、世界でも限られたYouTube、Facebookそれぞれの公認パートナーでもあり、今動画広告が最も出稿されている2大媒体において活用することが可能です。

そして、コンテンツ単位でのターゲティングが可能なため、個人データを一切利用することなく運用することが出来るということに大きな魅力を感じました。

 

-ほかにも日本に持ってくる候補となるようなソリューションを合わせて検討していたのでしょうか?

杉山氏:はい。候補となる他のソリューションも数十社リストアップをして比較しましたが、その中でも技術的な優位性や、YouTube、Facebook双方とのパートナーシップを持っていることなどから、ZEFRに決めました。

 

-ZEFRを知ってから提携に至るまではどのくらいの期間を要しましたか?

杉山氏:約1年を要しました。昨年3月に私たちのほうからZEFRにアプローチをかけて、日本への進出の提案をしました。その後ずっとパートナーシップの協議を進めてきましたが、その過程でLegolissと一緒にZEFRのソリューションを日本の広告主の方にも試験的にお使いいただくというような取り組みも行いました。約20案件のトライアルを重ねて、成果が出ることを確認できたため、正式に資本業務提携をして日本に持ち込みました。

 

 

YouTubeでコンテキストターゲティング配信を実現

-ZEFRというソリューションについて、詳しくお聞かせください。どのようなソリューションなのでしょうか?

ケニー氏:ZEFRは、クッキーに依存せずに、YouTube向け動画広告の配信面をコントロールすることが可能なプラットフォームです。日本においては現在YouTube向けのみですが、グローバルではFacebook向けの配信にも対応しており、将来的には日本でも利用できるようになる予定です。

先ほどの話の通り、YouTube側からデータを公式に提供してもらえることにより、大規模に、かつ高い精度で配信先をコントロールすることが可能となります。YouTubeが持つ膨大な広告在庫の中から、広告主様の求めるブランドイメージに沿う形で、量と精度の両方を担保したターゲティングコントロールが可能です。

広告主様や広告代理店様にとって、YouTube動画広告の運用においてクリエイティブ以外で競合他社と差別化をしてパフォーマンスを高めていくという手段は、これまで限られておりました。ZEFRは、YouTubeが伸び続けていく中で、動画を活用した取り組みをするためのソリューションに対するニーズがますます高まりつつあり、これに対応することが出来るプロダクトです。

 

杉山氏:ローカライズのところは、当初少し時間を要しました。配信のコントロールを米国側で行っていることから、私たちのほうでも最初はどのような面に配信されるのかというところは気にしており、ZEFR側から配信先のURLを全て出してもらって目視で確認を行いました。当初は日本語動画の解析の精度が欠ける部分もありましたが、徐々に機械学習で精度を高め、ZEFR側でも日本人の社員を採用するなどの対応を行いました。これにより、日本語の動画を解析するための精度は、改善をしてまいりました。

AIの技術が進む今でも、動画の中身を解析するということは、技術的にとても難しいことです。ですので、ZEFRは一部の動画に関しては人間の目で確認をして正解データを貯めて予測の精度を高めていくというアプローチをとっています。このようなやり方は「Human In the Roop」と呼ばれており、機械学習の工程に人が介在するという意味です。これが機械学習に依る精度を高めていくうえで、非常に有効なアプローチであるといわれています。

 

 

ZEFRで実現する、YouTube動画広告運用の価値向上

-ユニークポイントについて、お聞かせください。実際に競合となるのは、他のコンテキストターゲティング広告ソリューションでしょうか?

ケニー氏:コンテキストターゲティング広告を提供することが出来るプレイヤーは他にもいますが、そのほとんどはオープンWeb領域の配信面を対象としています。

ZEFRはコンテキストターゲティング広告を提供するプレイヤーであるものの、YouTubeに特化しており、YouTube公認のプレイヤーという強みがあります。

公認パートナーは、YouTubeの大規模なデータにアクセスすることが出来ます。YouTubeには常に膨大な動画がアップされますが、そのフレッシュな動画を解析し、管理画面へ動的に設定し配信することが出来るのは、公認パートナーであるZEFRだからこそです。

また、繰り返しになりますが、ZEFRは人の判断によって強化された独自のAI技術があり、動画に対して正確な解析をすることができます。コンテキストターゲティングは、これまでオープンWeb上のテキストやキーワードなどを対象に解析していました。Zefrは、動画広告に特化した、独自のソリューションを提供しているんです。

 

-セールス先はどのようなところがメインとなるのでしょうか?

ミリ氏:ZEFRに限らないことではありますが、グローバルのプロダクトとなりますので、外資系の広告代理店様への提案をすることも多いですし、またやはり大手総合広告代理店様も多いです。リリース後、ありがたい事に様々な代理店様からのお問合せが途絶えませんので、ニーズの高さを実感しています。

 

-実際の広告運用はどのように行うのでしょうか?どのようなチャネルで広告主に提供されるのでしょうか?

ケニー氏:広告主様や広告代理店様はAPIを通してシームレスに設定が可能です。既に運用されている既存アカウントの設定を何ら変更することがなく、追加的に配信先をコントロールすることが可能です。ですので、これまで運用担当者の方が独自に行ってきた工夫を活かしたまま、バージョンアップをすることが出来るのです。

導入時には、該当の広告商材と相性が良く、より効果が見込めそうなプレースメントのカテゴリを設定します。プレースメントのカテゴリは、現在80種類程度に分かれており、随時ZEFR側で増やしている段階です。

その後運用現場において、運用担当者がする作業は、ZEFR側から管理画面に届くリクエストを承認するだけです。配信の設定は全て米国側でツールを用いて行ないます。ZEFR側では人の目で強化されたAIで随時チェックが成されてクラスター分けをしています。

 

ミリ氏:広告主様から当社にお申し込みをいただいた場合、当社側でYouTube広告の運用まで実施することも可能ですし、いつもお取引をされている広告代理店様をつないでいただき、当社側でZEFRに関わる設定のみ実施することも可能です。

広告代理店様が持たれているアカウントのIDをいただければ、後はZEFR側と自動連係をすることが出来ますので、その後すぐに最適な広告運用が開始されます。

 

ミサ氏:グローバルでは誰もが知る世界的ブランドの広告主様にもZEFRを全面的にご活用いただいています。広告効果がとてもよいとの評価をいただいており、YouTube広告出稿の際には、必ずZEFRをご利用いただいております。

 

 

ブランドセーフティーとブランドスータビリティーを実現

-広告主は、実際にどのようなメリットを得られるのでしょうか?高い広告効果が得られる仕組みについて、解説をお願いします。

ミリ氏:ZEFRを使っていただくというメリットには、ブランドセーフティーとブランドスータビリティーの二つを実現できることが挙げられます。ZEFRでは、広告配信を行う際に、広告主様のブランドに毀損しないような配信面を、動画の中身を高い精度で判定して確保しています。そのうえで、ブランドスータビリティー、いわゆるブランド適合性の観点で、モーメントをとらえた広告配信をすることが可能です。ユーザーが見ている面やコンテンツの文脈にふさわしいタイミングで広告を出すことで、ユーザーにブランドメッセージがスムーズに受け入れられやすくなります。

 

ミサ氏:これを実現するにあたり、繰り返しになりますが、ZEFRはYouTubeの公認パートナーであることから、YouTube上にアップされている動画に大規模にアクセスすることが出来る権利を持っています。その中から該当するブランドが広告を配信するにふさわしい面のみを抽出し、ZEFR側がブランドにとってのプレミアムな広告在庫をリスト化します。

これを判別する上では、動画のタイトルや尺、Like数、Dislike数、説明文など、その動画に関する細かい項目までを読み込んだうえで、動画コンテンツの選別を行います。

人の目で強化したAIで判断するところは、特許も取得しています。配信先の選別においては、URL単位でホワイトリスト化をすることが出来るようになっています。従って、効果の高い広告運用が実現できるのです。

 

ケニー氏:広告代理店様の運用の現場では、これまでは配信面のコントロールを、手動で行っていたと伺っております。これをZEFRでは事前に自動的に行うことが可能になります。したがって、広告代理店様は、ZEFRを使うことでYouTube広告配信におけるアドベリフィケーション対策も行うことができるということにもなります。

 

-今後「ZEFR」をどのように普及させていきたいと考えていますか?

ミリ氏:究極的には、YouTubeで動画広告を出稿している全てのお客様にお使いいただきたいと考えています。

広告主様は、ブランドセーフティーを担保しつつ、ブランドスータビリティーを追求して広告効果を高めるために、YouTube動画広告の配信先をしっかりと把握していくことが今後求められるようになります。そのため、ZEFRのようなソリューションは今後ますます求められるようになり、私たちは広告主様のYouTubeを中心とする今後の動画広告活用におけるサポートを、しっかりと行ってまいります。

 

<お問い合わせ先>
ZEFR
zedr@legoliss.co.jp

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クッキーに別れを告げるとき、メディアがすべきこと[インタビュー]

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メディアとサード・パーティー・クッキーとの別れのときは刻一刻と迫っている。

デジタルガレージのグループ会社 BI.Garageが有力メディア28社と立ち上げたコンテンツメディアコンソーシアムに携わる、株式会社東洋経済新報社 ビジネスプロモーション局兼デジタル戦略本部 デジタル広告戦略担当部長 佐藤 朋裕氏と、株式会社BI.Garage 取締役COO 小林 篤史氏に、いまメディアが取るべき他選択肢や、同コンソーシアムが取り組むコンテキストターゲティング広告提供の取り組みについて、お話を伺った。

 

(聞き手:ExchangeWireJAPAN 野下 智之)

 

 

メディアアライアンスが、選択肢の一つ

-サード・パーティー・クッキー廃止により、メディアは今後の対応策としてどのような選択肢があるのでしょうか?

 

佐藤氏:まず、ターゲティング配信における対応としては、ファーストパーティークッキーのリッチ化が一つのカギになります。IDを持つメディアは、これを増やしていくことで、情報を追加していくことにより、最終的にそのユーザーがログインするとターゲティングが可能になります。

一方で、IDを持たないメディアは、ファーストパーティークッキー自体の情報を付加するというようなやり方でも、対応が可能です。

 

そしていま大切なのはコンテキストターゲティングです。当社ではAIで記事コンテンツを読み込んで、バナー広告枠に、これに近い記事広告の誘導が広告を表示させるという取り組みを始めています。これによりバナー広告のCTRが上昇するという結果も得られています。

ですのでこの手法は一般的な広告主からのテキスト広告でもディスプレイ広告でも応用可能です。ですが課題もあります。オーディエンスターゲティングの場合、過去の履歴をもとにアドサーバーで事前に在庫予測をしているのですが、コンテキストターゲティング広告は一方で、事前に広告の在庫予測をすることが困難になります。

 

当社では2年前に、コンテキストターゲティングを実験的に導入しました。その結果から見えてきたこととして、広告主は、エッジの立ったキーワードで広告を購入する傾向があるのですが、そうすると1メディアだけでは在庫が賄いきれないのです。

したがって、インプレッション保証での広告販売が出来づらく、メディアにとってはその販売方法を工夫する必要がでてくるのです。そしてメディア同士でのアライアンスは、その解決方法の一つとなってまいります。

 

 

-コンテンツメディアコンソーシアムの活動についてお聞かせください。

小林氏: 2017年からコンテンツメディア価値研究会という組織をデジタルガレージが事務局となって立ち上げました。ここでは、世の中デジタル化が進み、プラットフォーマーが台頭していく中で、実際にコンテンツを作り出している、日本を代表するデジタルの一次メディアが今後どのようにしていくべきであるかということをテーマに研究活動を行ってきました。

例えばメディアの信頼性と広告効果との関係性を、広告接触者の脳波を測定するというような調査も実施しました。

調査研究の結果、集まった28社のメディアによる広告が、広告主にとって高い価値があるものであることから、2020年よりコンテキストターゲティング広告事業を開始しました。

個々のメディアが集まることで、単体メディアとはまた違った広告主の課題を解決することが出来るということを、皆さんが感じていただきながら、事業化が進められてきました。

 

広告商品の特徴は、ブランドセーフティー対応が担保されているかどうかについて、第三者機関による審査に通った広告枠が配信の対象となるということ、そしてアドフラウドに対する対応も行っており、その高い品質を保証しているという点です。

 

 

“枠から人”ではなく、“人から枠”へ―メディアがコンテキストターゲティングに期待すること

 -コンテンツメディアコンソーシアムへの参画を決められた理由をお聞かせください。コンテキストターゲティング広告に対する期待値はどのようなものでしょうか?

佐藤氏:広告主が安心して出稿をすることが出来る場というものを今後も確保していきたいということが、参画した一番の理由です。

当社では「コンテンツメディア価値研究会」の発足当時から参加をしていますが、その名前にもあるように、数多あるデジタルメディアの中で、自分たちの広告媒体の価値というものについて、改めて考え直してみるということをじっくりと取り組むことができたことが良かったと考えています。

研究会を通して自分たちの広告媒体としての価値について、改めて自信を深めることが出来ました。

デジタルがメディアの中で主流になり、無数のメディアが出現しました。我々のようにコストをかけて作成しているメディアもあれば、他の記事の情報を寄せ集めて、記事を作っているメディアもありますが、同じ土俵で評価をされたとき、長い目で見ると結局はコンテンツを作成しているメディアは経済的に合わなくなってきますので、最終的には誰も手の込んだコンテンツを作らなくなってしまいます。

そうすると、広告主が安心して広告を出す場もなくなってしまうことは、言うまでもありません。

近年のインターネットメディアは、良くない流れに入りつつありましたので、そのような流れを変えたいという想いがあります。

サード・パーティー・クッキーが使えなくなる中で、かつて言われていた“枠から人”ではなく、“人から枠”へと回帰しつつあります。

 

広告効果において、枠が掲載されている面のコンテンツがどのようなものであるのかということが非常に重要であると思いますので、最終的にはコンテキストを持ったメディアが強くなってくるはずです。

メディアは今後よりコミュニティー等でエンゲージメントを高めていく必要があります。そうすると、そのメディアに対してターゲティングがしやすくなります。運用型広告においても、純広告においても、今後はコンテキストターゲティングというものの精度をどこまで高めていき、どのようにうまくこれを販売することが出来るのかということは、メディアの広告ビジネスにおけるカギになってくるところであり、高い期待を持っています。

 

-コンテキストターゲティングにより得られる広告効果についてお聞かせください。

小林氏:テスト販売の実績をご紹介させていただくと、ビューアブル時のクリック率において、コンテキストターゲティングをした場合と、そうでない場合とを比べたとき、0.24ポイントほどコンテキストターゲティング配信時のクリック率が高いという結果が出ました。

また、クリック後の広告主様のページに遷移した後のユーザーの直帰率や滞在時間もよい数値が出ており、クリックの量のみではなく質の面でも結果を出すことが出来ております。

そして、態度変容についても調査した結果、他の大手広告プラットフォームの広告と同じクリエイティブで配信を行った結果を比較したところ、ターゲットの認知率や興味・関心度合について、3~10ポイント程度高い結果となり、コンテキストターゲティングが広告効果を高めることに寄与出来ていると認識しております。

どのような広告商材を、どのようなコンテキストで配信するのかによって広告効果は変わってまいります。ですので、数値のばらつきは多少見られるでしょうが、しっかりと広告商材の特性を読み取って、関連性の高いコンテキストを選定することが出来れば、広告効果を高めていくことが出来ると考えております。

 

-コンテキストターゲティングに加えて、ファーストパーティーデータの活用も想定されているのでしょうか?

小林氏:広告主様から、ターゲットに応じて広告を当てていきたい層についてのご要望をいただいた場合には対応をしてまいります。また最近案件のご相談として、地域を絞った配信などについてもお話をいただいておりますが、これについても対応を進めてまいります。

データは、メディア側からの属性データを活用する形となります。

参画いただいているメディアから性別や年代などのデータをいただき、スイスの会社のデータプラットフォームを活用して分析した結果を活用して、オーディエンスターゲティングをすることも可能となっています。

 

コンテキストの提供こそがメディア価値

-ポスト・クッキー時代のメディアの広告ビジネス環境の将来像について、これまでと大きく変わるポイントをお聞かせ下さい。また、これを受けてコンテンツメディアコンソーシアムの今後の活動の方向性について、お聞かせください。

佐藤氏:本来メディアの役割とは、社会に対してコンテキストを提供するということです。ただしこの10年ほど、プラットフォーマーの出現によりその役割自体がクローズアップされることがなかったと思うのです。今後はメディアというものがコンテキストを提供することについて、より力を試されるようになります。

コンテキストを提供するメディアは、必ず強いエンゲージメントを読者と築くことが出来ます。結局広告も最終的にはユーザーとつながらなければ意味がありません。広告主がいて、“コンテンツ=コンテキスト”があり、そしてユーザーがいる。そうすれば、これらの三者がきれいな形でつながるのではないかと思っています。

 

小林氏:今までデジタル広告はデータを取得してこれを使い、ユーザー個々と最適なコミュニケーションを図っていくことが理想であるというように考えていく中、行き過ぎたメディアや広告主様もいらっしゃいました。

しかし徐々にプライバシー保護に対する対応が進み、それが出来ないようになりつつあります。また、世の中はリターゲティングのような、追いかけられるような広告に対して嫌悪感を持たれていることが、はっきりと言われるようになりました。

これからは、ユーザーに嫌われない広告をどれだけ提供することが出来るかということが重要になってまいります。

それを受けて、私たちコンテンツメディアコンソーシアムが取り組むべき一つの解がコンテキストターゲティング広告であると考えております。

コンテキストを持っているメディアとの相性が良い広告であれば、ユーザーから素直に受け取られるという調査データもあります。どのような広告商材と、どのようなコンテキストが合っているのかということについては、まだまだ掘り下げていきたいと思っています。

また、広告枠とそこに出すクリエイティブ、そしてコンテキストとの最適な組み合わせ方についても、まだまだ深堀して追求していくべきであると考えています。

それにより、ユーザーや広告主様にさらに価値のある広告を提供してまいります。

ドイツのメディアアライアンスでは、メディアやチャネルを横断するような取り組みも始まっていると聞いていますが、私たちコンテンツメディアコンソーシアムもまた、日本を代表する28社のメディアが集まっており、同様の取り組みが出来ればと考えております。

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アフィリエイト広告の実態から考える、デジタル広告業界がとるべき対応とは!?

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近年アフィリエイト広告による不当表示をきっかけとした消費者トラブルが相次いでいるという。この問題を受けて、消費者庁は実態把握のための調査の実施や、有識者によるアフィリエイト広告等に関する検討会を開催するなどの対策を進めている。

業界関係者は、今のアフィリエイト広告業界の現状をどのようにとらえているのか、また今後業界に関わる関係者がそれぞれどのような対応を取るべきなのか。

長年にわたりインターネット広告業界を見続けてきた、そして単品通販業界において日本でも指折のマーケティング専門家である、売れるネット広告社 代表取締役社長CEO 加藤公一レオ氏にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWireJAPAN 野下 智之)

 

不正アフィリエイト広告の裏側に潜むもの

―近年不正アフィリエイト広告をきっかけとする消費者トラブルが数多く報告されています。実際にどのようなことが起こっているのでしょうか?

私はアフィリエイト広告における3大不当表示は以下のものであると考えます。

一つ目が薬機法や健康増進法などの関連法を違反しているもの、二つ目は偽の口コミの掲載、そして、三つ目は有名人の写真を無断で利用する、というものです。

このような不正アフィリエイト広告には、基本的に広告主の思惑とアフィリエイターの思惑が隠れています。20年ほど前のアフィリエイターというのは主婦や学生のように自分が好きなものや世の中に出したいものをブログに書いて、純粋に世の中に紹介したい、そしてついでにお小遣いが稼げればいいなというような世界でした。近年はアフィリエイターを「本業」として取り組むことが当たり前になり、いわば職種のひとつとして確立したと言えます。

年間数千万、数億円を稼いでいる人も多くいます。「本業」になったので、アフィリエイターはビジネスとして継続的に「稼ぎ続ける」ことが必要になりました。

一方で広告主側は、純広告や普通の運用型広告を出稿していても、なかなか採算が合わなくなってきています。これらの広告では、CPOが3万円~4万円ほどまで高騰することがありますが、それと比較してアフィリエイト広告は成果報酬型なので、CPOを1万円~1万5000円程度に抑えることが出来ます。費用対効果が安定するので、リスクが少なくアフィリエイト広告に依存してしまうのです。

アフィリエイターは多少無理をしてでも顧客を獲得すればするほど儲かるようになっています。

 

結局アフィリエイト広告に関連して私が一番問題であると思っているのは記事型広告です。業界ではアフィリエイターによるアド運用と呼ばれているものです。インフィード広告をクリックすると、アフィリエイターなどの第三者が作った、記事型のページが現れます。そのサイトやページには、「〇〇ドットコム」など、商品に関連する一般的な情報を提供するかのようなサイトの名前がついています。そして、薬機法などの法律に抵触するような表現が使用されているという、はっきり言ってブラックな状態なのです。悪質なアフィリエイターは、そのような記事をいろんなところに複数出します。そして、そのリンク先が、広告主のランディングページ(LP)であるという仕組みになっているのです。

 

消費者側からすると、有名な大手の安心できるサイトに出ている広告であれば、信頼します。そして遷移した先に出ている記事を見ると、第三者が書いたものであることから、その記事を信じ込むわけです。「あ、この商品この芸能人が使っているんだ。」、「あそこの商品を飲んだら10キロ痩せるんだ」等の謳い文句に騙されてしまうわけです。

その結果商品を買ってしまう。その商品が、自動的に定期コースになっており、気づかないうちに購入回数に縛りがある契約になっているため、解約ができないということはよくあります。違法な表記の記事型広告で消費者が騙されてしまっているのに、悪質なアフィリエイターは野放しで売上を上げ続けてしまっている。この構造が、今問題になっているのです。

昔のアフィリエイト広告はよかったのですが、今の記事型広告を絡めたアフィリエイト広告に問題がある。「不正アフィリエイト広告=記事型広告」の可能性が高い。これが私の意見です。

 

 

責任逃れが許される構造

―ネット広告の不正の中でも今、アフィリエイト広告における不当表示が問題視されているのはなぜだと思われますか?

基本的には一部の悪質なアフィリエイターたちが、小遣い稼ぎのために好き勝手しているからです。

例えば、非常に悪質なアフィリエイターの中にはアルバイトを雇ってわざとその広告主の商品を購入するようなやり方をする人もいます。もし広告主の成果報酬単価が1万円の場合、アルバイトに2000円の商品を買ってもらうと、手元に8000円が残ります。そのアルバイトには商品代金を渡して、その後すぐに解約してもらうのです。

でもやはり、私の中で、いま一番問題にしているのは、アフィリエイターが主導になっている記事型広告です。

広告主は成果報酬1万円を設定して「あとは任せます」となります。それに対して、アフィリエイターたちが、成果単価を目当てに勝手に広告主の許可なしに記事型広告をどんどん作成する。中には広告主側も、そのような記事広告が出ているということを分かっているのだが、自分が関わったら逮捕されてしまうから、見て見ぬふりをしていることがあります。ここで、黙認しているのが大きな問題なのです。

アフィリエイト広告業界の中には、悪質な建前があるのです。どのようなことかというと、広告主は、アフィリエイターから「原稿をチェックしてください」と言われた上で違法な広告を許可しない限り、違法な広告が運用されていることを「知らなかった」と言い逃れができてしまうのです。

例えば、アフィリエイターが書いたとても悪質な記事型広告があったとします。発覚して追及されたとき、広告主は「いや、それはどこかのアフィリエイターか、運用会社が勝手に書いたもので、我々も困っているんです。知りませんでした。」ということで逃げることが出来ます。一方で、アフィリエイターはどのように逃げるかというと、「いや、私は広告のお金など貰っていません。勝手に感想を書いただけですから。たまたま広告主のリンクを張っただけなのですが、何か問題ありますか?」と逃げることが出来るのです。

つまり広告主側も捕まらない、アフィリエイター側も捕まらない、という風に、責任逃れが許されるような構造になっているのです。

 

 

―記事型広告が使われるようになったのは、ここ数年の話なのでしょうか?

感覚的にはここ数年で目立ってきました。アフィリエイターの集客手段は、SEOが主でした。検索エンジンに引っかかりやすいサイトを作り、そこに消費者を集客して、アフィリエイト収入を得ていたのです。

しかし、その後Googleが「健康アップデート」と呼ばれる、検索エンジンの仕様変更を行ったのです。それまで一生懸命記事を書いてアフィリエイトをやっていた人たちのサイトが検索エンジンでほぼ引っかからなくなりました。その結果、アフィリエイターは稼ぐことが出来なくなりました。そうすると、それらのアフィリエイターはどうしたかというと、自らが広告主となり、アドネットワークなどに広告を出稿して自社サイトに集客を図るようになったのです。その時に一番やりやすいのが記事型広告の不正なページをたくさん作り、そこに広告主のECサイト(ランディングページ)のURLを掲載し、成果報酬を得るという手法です。

 

 

―そのような人たちは、個人なのでしょうか?法人なのでしょうか?

私の肌感覚だと、大部分は個人です。それ以外は、個人が法人を立ち上げてやっているという印象です。

 

 

―不正な広告表示は、アフィリエイト広告に限らない気も致します。たとえば、誰もが知るような大手媒体にも、それらしきものが紛れ込んでいるようにも見受けられます。

誰もが知るような大手サイトでも、そのような広告が見受けられます。サイトの下に現れる、ネイティブアドと呼ばれているものがあります。コンテンツの中に紛れ込ませている広告です。

私の意見としては、そもそもこのような広告の配信を受けていることが、悪の根源なのです。マスメディアといわれるような大手のサイトでも、このような広告が出ていることが信じられません。このような広告を許しているようでは、媒体社も責任は免れません。

媒体社からすると、広告主が多すぎて、十分な審査のしようがないのでしょう。

 

 

―「Sponsored」や「PR」など、広告であることが表記されていれば、いいような気もするのですが、そうではないのでしょうか?

このような広告のリンクは、記事を挟んで広告主のLPにリンクする仕組みになっています。そのため、記事風の広告になってしまうのです。

あくまでも私の感覚ですが、健康食品・化粧品の通販広告の記事型広告において広告表記に問題があったり、フェイク広告であったりする割合は少なくないように感じます。

 

 

―それほどあるのなら、媒体社の方は気づかないものなのでしょうか?

サイトにアクセスをするたびに表示される広告は更新されてしまいます。そのためあまりにも配信される広告が多すぎて、管理をすることが出来ないのです。

これが問題です。つまり、媒体社としては「うちはアドネットワークを入れているだけで、それを管理するのは配信側です。我々ではないです。」というように、今は、誰もが逃げることが出来るようになっているのです。

 

 

―アドネットワークについてはどう思われますか?

アドネットワークの場合には建前上「考査をしています」と答えます。しかし、全てを考査しているようには思えません。恐らく物理的に難しいのでしょう。極端な話でいうと、一旦考査を通した後、アフィリエイター側はリンクのページを変更することもできるのです。悪質なアフィリエイターは、そのようなことまでやるのです。

 

 

課題解決に向けてやるべきこととは

―この問題を解決する上で、誰が何をするべきなのでしょうか?

国が、広告主とは別ドメインの記事型広告を規制する等、厳しい対応を取るべきです。広告主自らが書いた広告であれば問題ないが、第三者が書いた記事型広告は取り締まるべきです。

記事型広告を使ったアフィリエイト広告というのは、いわばバイブル商法です。例えば「キノコで癌が治る!」というような宣伝文句を入れた小冊子を、家のポストに投函して、翌週にはそのキノコの商品のチラシがポストに入っている。というような手法のことです。これは大昔からあった悪質な手法です。このような手法はインターネットの時代になっても変わらないのです。

 

 

―昔からキノコがすごい大好きなキノコ博士のような人がブログを書いて、たまたま趣味の延長でアフィリエイトを貼っておけば儲かるのなら貼っておこう・・というようなタイプのアフィリエイターは、今はいないものなのでしょうか?

そのようなアフィリエイターはいるのかもしれませんが、そこが抜け道になっています。キノコのことは書いてもいいが、広告主のサイトにリンクさせなければいいのです。そのような法律を作ったほうがいいのです。強引ですが、そこまでやらなければ、今起こっているような不正はなくなりません。ずっとイタチごっこのままです。

 

 

―デジタル広告に携わる関係者は、今この問題にどう向き合い、どのように解決していくべきなのでしょうか?

私が思うのは、やはり媒体社が広告の審査をしっかりと行うことです。

広告主は、マーケティング手法としてアフィリエイトに依存し過ぎることはやめるべきです。

私が取引している広告主のなかには、アフィリエイト広告の利用をやめている広告主もいます。なぜならば、今起こっているような悪質なことが起きるからです。

広告主が、自身でしっかりとマーケティングの取り組みに対する努力もせず、「成果報酬でお客さんを連れてきてください」とアフィリエイト広告に依存するというのは、単なる甘えに過ぎません。

今の広告の取引構造をもっとシンプルにするべきです。今、記事型広告は、広告主、広告代理店、アフィリエイター、アドネットワーク、媒体社と、多くの事業者が介在しています。そして、それぞれがお互いを知らないことになっているのです。このことにより問題が発生するのであれば、この構造を変える必要があるのです。

 

 

―アフィリエイターの中には、もちろん真面目に取り組んでいる方もいると思うのですが、そのような方々はどうすべきでしょうか?

真面目な個人のアフィリエイターは、今はYouTubeやInstagramなどのプラットフォームで、自分の話す内容で、顧客を獲得して収入を得るほうが、より効率的でしょう。YouTubeで多くの登録者を集めたり、Instagramで多くのフォロワーを獲得して、そこで商品を紹介して収入を得るようなアフィリエイターもいます。今ウェブサイトでは、ファンやフォロワーなど一人もいないようなアフィリエイターが悪質な記事を書いているのです。真っ当なアフィリエイターは、YouTubeやInstagram、Twitterでしっかりとファンやフォロワーを持っています。違法な広告で消費者を騙すようなやり方ではなく、しっかりとファンを増やしながら影響力を増やしていく努力を続けている「本物」だけが生き残っていってほしいと願っています。

 

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マスからデジタルの受け皿へ―フルファネル対応を目指すTwitterの新しい施策 [インタビュー]

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Twitterでは「ブランドセーフティ(ブランドの安全性確保)」をTwitterの広告および測定ソリューションの中心的なテーマとして位置付けている。デジタルプラットフォームへの広告投資意欲がグローバルで強まる傾向のなか、Twitterではそれに応えるために様々なプロダクトの開発やメッセージの発信を行っている。

 

Twitter Japan広告事業執行役員の松山歩氏(写真・左)と広告事業部 統括部長の持田忠一郎氏(写真・右)に広告ビジネスのトレンドと新たな広告効果測定への取り組み、およびブランドセーフティの取り組みに対して話を聞いた。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下智之)
(ライター:同 柏海)

 

速報性と多面性が求められる情報収集ニーズは

デジタル広告市場全般における直近のトレンドについて、どのように認識をしていますか。

松山氏:ユーザーの情報収集ニーズは引き続き強く、ソーシャルを中心としたデジタルプラットフォームの利活用が拡大するトレンドが非常に強いです。弊社の第2四半期の広告配信可能なDAU(広告が表示されるDAU)もグローバルで2億600万人となっており、おかげさまで前年同期比10%以上の成長を継続することが出来ました。

 

こういった傾向は生活者のなかで、とにかく早く情報を収集したいという速報性のニーズ、および多面的に1つの事象を分析したいというニーズの2つが表れた結果だと見ています。例えば、新型コロナウイルスのワクチン情報についても、いち早く情報を入手すると共に、政府やマスコミの情報だけでなく実際の使用者の声などを皆さん集めているのではないでしょうか。

 

また、各SNSユーザーの1日あたりの利用者数のトラフィックを見ても、日本ではTwitterが他のソーシャルメディアよりも高く、更にそれが上昇傾向にあります。

そのような状況下で、広告主の皆様にとっても、成長を続けているソーシャルプラットフォームに対する投資意向は非常に強くなってきていますが、更にその中でもTwitterへの期待感は広告主の間でも高まっていると感じます。

 

広告主の業種別広告出稿トレンドについてお聞かせください。

松山氏:消費財系の広告主による広告出稿意欲は回復基調にあります。これはコロナ禍でも少しずつ先の状況が見えるようになってきたことが理由に挙げられますが、それとは別のトレンドとして、マスからデジタルへのシフトがより加速していることも大きな理由であると、分析しております。これは日本に限らず、グローバルにおけるトレンドでもあります。

 

一方で、旅行系や飲食系の広告主などにおいては、コロナ禍の影響が継続しており、引き続き出稿を控えている傾向がみられます。ただ、米国ではワクチンが普及し始めたタイミングで旅行系や飲食系の広告出稿が盛り上がりつつあるので、日本でもワクチンの接種が広まれば回復し始めるのではないかと考えています。

 

顧客のフルファネルソリューションに対応

―Twitter社の広告ビジネスにおいて、足元の課題として感じていることをお聞かせください。

松山氏:1つは「顧客のフルファネルソリューションへのニーズに応えていきたい」ということです。Twitterは従来よりアッパーファネル(認知、興味関心層)に強いプラットフォームではありますが、ミドルファネルやその先のローワーファネルについても、特にモバイルアプリのダウンロードに関しては顧客から定評をいただいていると認識しています。ただ、今後はeコマースなどのダイレクトレスポンスの領域でどれだけTwitterが貢献できているか、それを可視化して見せていく必要があると思います。

 

もう1つは「マスからデジタルにシフトするなかで、Twitterがマスメディアとシナジーを効果的に発揮できることを知ってもらいたい」と考えていることです。コロナ禍で広告予算が大きく動いていますが、顧客の「商品、サービス認知を短期間で獲得したい」や「新CMをより多くの人に見せたい」というニーズに対して、Twitterではその受け皿になるプロダクト自体は一通り揃っています。

 

マーケティングや営業の努力によるところでもありますが、我々のプロダクトの特徴を伝え、ご理解をいただくことにより、Twitterがテレビなどのマス媒体とシナジーを発揮し、組合せの中で効率的なリーチを獲得できることを知ってもらうのは大きな機会となります。

 

デジタルシフトの受け皿となるために、具体的にどのようなプロダクトを提供していますか。

松山氏:プロダクトとしては“動画広告の15秒再生の最適化”という新たな入札形態を用意しました。こちらは動画広告を発信する際に、動画の尺に関わらず、最低15秒は視聴してくれる可能性が高いユーザーに広告を届けるために、配信先の最適化を行うメニューとなります。

このメニューが生まれた背景は、TwitterがテレビCMの補完として使われるために「最低でも15秒は動画をしっかりと見せたい」という顧客の声が強くあったことです。これに対して、我々もマスからデジタルの流れの受け皿となるべく、用意をさせていただきました。

 

ブランドリフト調査で、アカウンタビリティに対応!

―Twitter社では新しい広告効果測定とブランドセーフティにおける取組に関するメッセージを発表されました。新しい効果測定に取り組み始めた背景からお聞かせください。

松山氏:先ほど「マスからデジタルへ」という傾向のお話をしましたが、その過程におけるアッパーファネル、特にブランドリフトに関しては、アカウンタビリティ(説明責任)へのニーズが高まっています。

そのニーズの高まりに応じて、Twitter社では2019年末にファーストパーティ測定ソリューション「Twitter Brand Survey」の提供を開始しました。こちらはファーストパーティによる調査なので、ユーザーは他のサイトに移行することなく回答可能で、サンプル回収率も非常に高くなっております。

 

また、Twitter Brand Surveyを利用している広告主は、広告想起では平均でプラス21ポイント、メッセージ連想で平均プラス7ポイント、検討以降・購入意向段階でプラス6ポイントの増加を確認しています。

 

安全なTwitterはより良いTwitterである

ブランドセーフティに向けたお取り組みの背景をお聞かせください。

持田氏:我々は一般ユーザーから広告主、代理店パートナーも含め、Twitterを安全・安心なプラットフォームであると認識し使ってもらうために、様々な取り組みを行っています。

ただ、ソーシャルメディア自体は既存のデジタル媒体と異なり、様々な声が集まる集合知が特長の新しいメディアです。日本でのサービス開始は2011年で歴史も浅いですが、Twitter上の 厳しい声に対して、どのように応えていけば良いかをずっと悩み続けています。

 

特に2019年以降はTwitterの媒体規模が非常に大きくなってきたため、ブランドセーフティに対してよりアクティブに取り組んでおります。また、2020年に起きた「ブラック・ライヴズ・マター(黒人の命をないがしろにするな、とする運動)」では、ソーシャルメディアで始まった運動がソーシャル内に留まらず、ソーシャル以外の広告主ビジネスや一般ユーザーの行動に波及したりなど、非常に大きなインパクトがありました。

現在、Twitterでは「Safer Twitter is better Twitter(安全なTwitterはより良いTwitterである)」というメッセージのもと、様々なブランドセーフティおよびヒューマンセーフティの活動に取り組んでいます。

 

具体的にはどのような活動をしているのでしょうか。

持田氏:テクノロジーの会社として、プロダクト開発を進めることが一つの大きな証明になると考えています。

直近では、広告向けのツイートに会話をより細かくコントロールできる「広告向け会話参加設定機能」を設けました。今までは自由にリプライやコメントが出来ていた広告について、今後は会話のコントロールも必要に応じて広告主に行っていただき、ブランドセーフティの一環として使っていただければと思います。

また、DoubleVerifyやIntegral Ad Scienceとのパートナーシップを通じて、第三者によるブランドセーフティ測定ソリューションを強化しておりますが、今後のプロダクト開発として、広告主が出稿した広告の隣接コンテンツについてレポーティングできる機能の開発も進めていく予定です。

 

今後はどのような取り組みを進めていく予定でしょうか。

持田氏:一つは外部の団体から更なる認証を受けることを考えています。

あなたのプラットフォームは安全ですよ、と第三者に証明していただくのは広告を出稿いただくクライアントだけでなく、普段利用されるユーザーから見ても安心いただけるポイントだと考えており、Twitterでは、海外のTAG(Trustworthy Accountability Group)という団体から、Brand Safety Certified Seal(ブランドセーフティ認証マーク)を取得しております。これからは他の認証も取得したいと考えており、それらの情報も積極的に発信していきたいですね。

またブランドセーフティの啓蒙活動も重視し、社内や社外、海外や日本など、様々な角度で我々のブランドセーフティへの取り組みやその重要性について伝えていきたいと思います。

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1つの管理画面で横断的に広告を管理―ヤフーの新たな広告プラットフォーム体制 [インタビュー前編]

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ヤフーでは2020年度にかけて「Yahoo!プレミアム広告」や「Yahoo!プロモーション広告」を「Yahoo!広告」として一つのプラットフォームに統合した。今回の統合に伴い、YDNなどの従来のサービスも新体制に引き継がれ、サービスを提供していくこととなった。

ヤフー株式会社のメディア統括本部ディスプレイ広告ユニットマネージャーの芝崎健太氏と同ユニット予約型広告サービスマネージャー小嶋浩司氏と同ユニット運用型広告サービスマネージャーの田中翔平氏にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下智之)
(ライター:同 柏海)

なお、本インタビューは2部構成となっており、後編ではYahoo!のデジタル化について取り上げる。

 

Yahoo!広告としてワンプラットフォーム化

―自己紹介をお願いいたします。

芝崎氏:2021年の4月にヤフーの組織体制が変更され、広告のプロダクト部門とメディア部門が一緒になり、同じ執行役員の下で活動することになりました。それに合わせて、私が広告事業領域の責任者という形でアサインを受け、現在は業務を行っております。

経歴として、ヤフーには2003年から在籍し、広告事業の中で営業や商品企画、マーケティングなど様々な業務を担当してきました。直近ではメディアサービス部門に移り、いわゆるYahoo! JAPANのトップページやニュースや天気などのサービスに関する経営企画にも携わりました。こちらはビジネスモデルの基本は広告ビジネスモデルで収益を上げていますので、実際には広告とto C向けのサービスを接続するようなハブの部分も私のほうで担っていたという背景があります。

小嶋氏:私は2020年から予約型広告のサービスマネージャーを担当しております。その前までは、「Yahoo!プレミアム広告」の商品企画担当として、Yahoo! JAPAN のトップ面にある「ブランドパネル」広告の値付けや、新商品の企画、新しいテンプレートの検討を行っておりました。。

ヤフーには2008年からおりまして、私もずっと広告領域を担当してきましたが、去年より予約型のサービスマネージャーを行っているというような状況になります。

 

田中氏:私は2021年の4月から運用型広告のサービスマネージャーを担当し、運用型広告に関する機能追加や精度改善等の責任者をしております。

私は大学からいわゆる人工知能や情報処理、自然言語処理などの研究をして来まして、ヤフーに新卒で入社をしてからは、継続的に広告の開発や研究領域に携わり、特に運用型広告の配信のコアとなる広告収益の計算や広告選定のロジック開発を行ってきました。ヤフーとしても、運用型は今後自動化をしっかりやっていくべきだという考えもあり、長年専門であった私がサービスマネージャーに就任した経緯がございます。

 

―貴社では2020年度にかけて「Yahoo!プレミアム広告」や「Yahoo!プロモーション広告」を「Yahoo!広告」として一つのプラットフォームに統合されましたが、その背景についてご共有ください。

芝崎氏:広告の出稿や管理を1つのプラットフォームに取りまとめる、というのが大きな背景になります。

ヤフーもサービス当初は予約型の広告しかなかったのが、検索、運用型と少しずつ商品ラインナップも増えて行きました。しかし、それぞれの配信システム等が異なるために、ログも共有出来なければレポートも別々に出さなければならず、同じYahoo!の広告ソリューションでありながら、使い勝手の悪いサービスになっていました。

ここに手を入れるのは作業時間や工数など、大きな課題がありましたが、ヤフーとしても「これはやるべきだという決断をして、約3年の歳月をかけて計画をスタートし、結果的に去年から今年にかけてリリースや切り替えの実施に至ることが出来ました。

現在は各広告が1つのプラットフォームから出稿が可能な管理画面を提供し、プロダクト横断のログやレポートを見ることも可能となりました。ヤフーとして、マーケティングソリューションの基盤がしっかりと出来上がって、その上でサービスを磨くことに改めて着手することが出来るようになったと考えています。

 

ディスプレイ広告の商流を一本化

―予約型広告も運用型広告も1つのプラットフォームから出稿ができるような管理画面になったとのことですが、他にはどのような変化があったのでしょうか。

芝崎氏:管理画面の統合と合わせて、予約型広告におけるメディアレップの制度をYahoo!広告では廃止させていただきました。

今まではメディアレップ様でヤフーの取り扱う広告を取りまとめていただき、その先にエージェンシーさんが居るという形でお取引をしておりましたが、従来の運用型広告と同じように各エージェンシーさんと直接、メディアレップを介さずに取引をする形に変えています。

 

―予約型広告のインプレッション保証が変更されたとのことですが、どのような体系になったのでしょうか。

芝崎氏:従来の予約型広告はインプレッションを保証するサービスとして20数年提供してきましたが、そこをビューアブルインプレッションの保証に変えました。

今までもインプレッション保証でありながら、ファーストビューに広告が入るようなものが大半を占めていたので、ビューアブルレートとしては非常に高くありましたが、それでも100%ではありませんでした。ここをよりお客さまにメリットを感じ、安心して出稿いただけるようにというところでのビューアブルインプレッションでの保証に切り替えました。ビューアブルインプレッションを保証するためには、将来の在庫を予測しなければならず、その精度が求められますが、挑戦して実現させました。

 

様々なターゲティングメニューで広告を正しく届ける

―現在のYahoo!広告の強みについて、御社ではどのようにご認識をされていますか。

小嶋氏:予約型に関しては先ほど芝崎よりお話したとおりで、インプレッション保証からビューアブルインプレッション保証になったため、「しっかりと広告が見られている」という点に価値を感じてもらい、そこを保証しているのが1つの強みになります。

このビューアブルの定義は、50%の表示で1秒以上見られていたら1ビューアブルとしてカウントいたします。

更に、PCであれば「リッチアド」といわれる、ブランドパネルの枠だけでなくて、サイドにもバナーを出すことで大きく広告を表示出来るメニューもありますので、そういったものを掛け合わせることによってブランド認知の向上をお手伝いできるかと考えています。

田中氏:運用型広告の視点からお話しすると、「ヤフーというメディアの品質が高い」というのは大きなポイントかと思っております。いわゆるアドフラウド対策など配信面の品質だけでなく、メディアに来るユーザーについても、質の高いユーザーがいらっしゃっています。

Yahoo! JAPAN IDを取得し、ログインをしてからヤフー内の各サービスを利用しているユーザーも多く、ユーザーの識別がしっかりできているのも大きな特徴です。広告主の方の視点からは、年齢・性別・地域などの情報を確定情報としてしっかり活用しながら精度の高いターゲティングがご利用いただけますし、ユーザーから見ても自分に合った広告を受け取ることが出来ます。

ターゲティングのメニューとしても、新たに「コンテンツキーワードターゲティング」を本年7月より提供を始めました。こちらは、Yahoo!ニュースの記事を分析し、ニュース記事内のキーワードを分析し、お客様の指定したキーワードと関連性の高い配信面にターゲティングが可能なメニューとなっています。このようなターゲティングに関しても、社内のアセットをしっかり活用できるのは強みだと思っています。

 

 

―近年はサードパーティークッキーの制限の文脈で、「コンテンツマッチ広告」といった広告も代替策として注目をされていますが、こちらも同じような使い方が出来るという理解でよろしいでしょうか。

田中氏:コンテンツターゲティングは、純粋な機能強化を目的とした側面もありますが、個人情報保護の流れを汲んだターゲティング機能でもあります。個人情報を使わない形で広告事業継続的に成長させていくという観点で、大事なピースの1つになる機能かと思います。

利用方法としては、広告を配信対象としたい、または配信除外をしたいコンテンツの内容を指定したキーワードリストをお客様にご用意いただき、それを広告グループに紐づけてターゲティングを行っていただく仕組みになります。こちらは追加でコストが発生するわけではなく、既存のターゲティングと同じ様にご利用可能です。

例えば、大谷翔平選手のニュース記事が出た時に合わせて自動で広告が出る、というのは分かりやすい使用例にはなりますね。一方で、例えば車メーカーさんが交通事故のニュース記事には広告を出さない、といった形で、除外のターゲティングを行うケースも増え始めております。

芝崎氏:サードパーティーの利用制限は非常に大きなインパクトがありますが、ヤフーとしても情報収集と取りまとめを積極的に行いながら、どう対応していくかという検討については専任の部隊を設置し行っています。

実際に使えなくなるのは先の話になりますが、期限も示されています。情報も常にまとまって出てくるわけではないので、順番に出てくるものを拾いながら、自分たちの中でそれを整理し、俯瞰的に捉えながらも、対応方法を検討していきたいと思います。

 

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フルファネルソリューションに対応―ヤフーの新たな広告プラットフォーム体制 [インタビュー後編]

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ヤフーの新たな広告プラットフォーム体制のお話を聞く全2回のインタビュー。
後編では今後の課題や注力領域についてのお話を伺う。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下智之)
(ライター:同 柏海)

 

大手企業を中心にデジタルシフトが進行

―コロナ禍のディスプレイ広告市場の市況についてはどのように見ていますか。

芝崎氏:コロナ禍で、旅行業など特定の業種において広告出稿を買い回抑える動きはありましたが、全ての業種で等しく広告出稿が落ちるという状況ではないので、かなり特殊な状況にはなっています。広告出稿を控えている特定の業種については、コロナ禍が落ち着けば自ずと広告出稿も戻ってくるかと思いますので、今はコロナ禍が落ち着くのを待ちたいと思います。

一方、コロナの影響で生活者の生活が変容し、おうち時間が増えたりECの利用も高まりました。その結果、広告主様もマーケティングの手法を色々と模索され、今このタイミングでデジタルシフトを積極的にご検討される広告主もいます。

ヤフーのディスプレイ広告に関しては、大きな傾向の変化はありませんでした。しかし、新たにディスプレイ広告を使われ始めている企業の傾向としては、大手企業のなかでも、業種によっては、今まであまりデジタルを使ってこなかった、もしくはご予算の中でのデジタル比率がそれまで高くなかった業種がありましたが、そのなかでデジタルシフトを積極的に検討されているように感じます。

 

―中小企業向けに提供していく広告サービスも構想のなかにはあるのでしょうか。

小嶋氏:はい、中小企業の皆様に向けた広告サービスも、今後は取り組みを進めていきたいと思います。

今まではグロスの大きいお客さんをメインとしていた部分は大きかったですが、弊社のセールス体制の中でも、スモールB向けのセクションは引き続きございます。更に、今回のワンプラットフォーム化により、Yahoo!と代理店が直接やり取りをする体制に変わりましたので、間口は広がったと考えています。

今後、色々なお客様にしっかり買っていただけるような形で商品の設計をやっていきたいと思っているので、中小企業含め、お客様に合わせた各商品を次々と出していきたいと思います。

 

自動化機能を強化し、ワンプラットフォームの強みを生かす

―今後の課題について、どのような認識をしていますか。

芝崎氏:Yahoo!広告としてワンプラットフォームにはなりましたが、まだ運用型広告の機能強化は図っていきたいですね。また、ワンプラットフォーム化に伴い、運用型広告・予約型広告の両方を組み合わせることで、Yahoo!としてどのようなソリューションを提供できるか、というのは考えていきたいと思います。

田中氏:運用型広告の機能強化に関してですが、こちらは自動化機能の強化を第一に考えています。特に自動入札機能や推定ユーザーの拡張機能(ターゲティングの自動化)、クリエイティブの自動最適化機能、の3つに関しては、競合の動きも見ながらしっかりと追いついていかなければなりません。

それが大前提としてありながら、個人情報保護の流れもあるので、個人情報保護と様々な自動化機能を両立させていくのが課題になると思います。例えば弊社の場合は、リターゲティング広告におけるユーザーの拡張機能があり、本機能では、広告主のサイトに訪問のないユーザーをターゲットとし、そのサイトに訪れたことがあるユーザーと似ているユーザーに対し、我々のほうで推定を行い、配信対象を拡張して広告を配信する機能をご提供しております。このような機能に対して、広告主のサイトの訪問情報を十分にいただかなくても、広告主の商材に興味を持ちそうなユーザーに対し、配信対象を精度良く自動的に拡張するような機能を強化していく必要があると思っています。

小嶋氏: 運用型広告・予約型広告の両方を組み合わせたソリューションの提供について、今までは予約型は予約型単体で、運用型は運用型単体で、という形で見られているケースが多かったと想定しております。

今後は単体としてではなく、トータルとしてどのような形で広告配信をすることで、コンバージョンを最大化出来るのか。また、その前の中間KPIについても、今は最適な形を探している状況です。そのためには、レポートで各広告の効果を可視化することが重要になってくると思っておりますので、より分かりやすいような形で提供が出来ればと思っております。

しっかりそこまで含めた形で可視化できることが一番重要だと思っておりますので、そこに関して、今後もっと分かりやすいような形で提供していきたいなと思っているという形です。

 

Zホールディングスとしてフルファネルソリューションを目指す

―広告市場のなかで、今後の注力領域としてはどのようなものがございますか。

芝崎氏:デジタル広告のマーケットの中で伸びている領域としては、動画広告の領域だけでなく、アプリのインストールを目的とした広告も非常に伸びていると認識しております。しかし、ヤフーとしては、まだ市場シェアから見てもアプリのインストール広告では貢献がし切れていないという思いがございます。

アプリのインストールを目的とするゲームメーカーの広告主様を中心として、より活用がいただけるようにと、広告効果を高められるように取り組んでいます。実際に少しずつ伸びて来ている状況でもありますので、広告主様にも評価をいただきながら、取り組んでいきたいです。

今のは近い将来のお話でしたが、少し先の話になりますと、Zホールディングスとしてグループ会社にもなりました、LINEあるいはPayPayといったグループのアセットをうまく活用する形でのソリューションをつくっていきたいと考えています。時間軸としては相当長い計画になるかもれませんが、先を見据えながら取り組みを進めていきたいですね。

これらの取り組みによって、広告認知の獲得から顧客の育成を行うまで、一貫したフルファネルのソリューションをワンストップでご提供できるようにしていきたいと思います。

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日本市場におけるプログラマティック広告の本質的な課題とは―OpenXが最新動向調査を発表

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アドエクスチェンジ大手のOpenXとExchangeWire.comが、日本及びアジア太平洋市場のプログラマティック広告市場の概況を示すレポートを発表した。本調査結果が浮き彫りにした日本市場の特異性について、OpenXの日本支社で日本におけるサービス全体を統括する目黒圭祐氏に話を聞いた。
(聞き手:ExchangeWire JAPAN 長野 雅俊)

 

媒体社は広告枠の価値を再定義しなくてはならない

 

―本調査を実施するに至った経緯をお聞かせください。

過去1、2年の間に、コロナ禍やCookie制限を始めとするプライバシー保護に関する規制など目まぐるしい動きがありました。北米や欧州が起点となることが多いプログラマティック広告市場において、日本やその他のアジア諸国がこうした変化にいかに対応しているかを正しく認識した上で、プログラマティック広告運用に関する今後の戦略や指針作りに役立てていただきたいとの思いを持って調査を実施した次第です。

 

―本調査では、プログラマティック広告を通じた収益を拡大させた媒体社が多くあると報告されています。一方でプレミアムな純広告が割安なプログラマティック広告に置き換わることで値崩れが起き、全体的な収益は下がっている可能性はないですか。

一般論として、純広告枠が減り、プログラマティック広告枠が増えています。ただし、全ての純広告が高いから売れなくなり、プログラマティック広告が安いから買われているとは思いません。広告主は、たとえ広告料金が高くとも、然るべき広告効果があれば出稿するからです。実際に純広告よりも高い値付けで成立しているオープン・オークション取引はたくさんあります。純広告とプログラマティック広告を共存させることで、収益をさらに伸ばすことが可能です。

 

つまり媒体社の課題は値付けではない。デジタルテクノロジーの発展を受けて、精緻なマーケティングを行えるようになったにも関わらず、純広告では「効果測定ができない」または「マーケターのKPIを達成し得る手段となっていない」ことこそが問題なのだと思います。

 

―広告の買い方が変化しているにも関わらず、売り方が変わっていないということですか。

多くの媒体社は、依然として広告枠を販売しています。つまり、どのページのどの位置にどれくらいの大きさでどのように広告を表示するかを販売先に対して案内しているのです。

 

しかしながら、広告主、広告代理店、DSPといったバイサイドが実際に買い付けているのは、その広告枠の先にいるユーザーです。それらのユーザーは、どんなことに興味を持って、どれほどの購買力があり、自社商品・サービスの優良顧客となる確率はどれほどなのか。こうした要望に応えるために必要なオーディエンスデータを整備している媒体社は、日本市場においてはまだ圧倒的に少ないというのが現状です。

 

また北米市場においては、PMPとオープン・オークションの比率がほぼ同じになりつつあります。一方の日本市場ではPMPはいまだ稀有な存在です。バイサイドの需要や課題を踏まえた広告商品づくりという点においては、日本はだいぶ遅れているとの印象を持っています。

 

IDソリューションが媒体社に与える影響

 

―本調査では、IDFAとサードパーティーCookieの廃止または制限に向けた動きに対する懸念の大きさも明らかになりました。どのような対応策が考えられますか。

当社を含むいくつかのテクノロジーベンダーがIDソリューションの開発と推進に取り組んでいます。元々は、いわゆるウォールドガーデンが様々なデータの囲い込みを行う中で、オープンウェブにおいても、ファーストパーティーデータを利用することでより精緻なオーディエンスターゲティングを実現することを目的として始まった取り組みです。ところがIDFAやサードパーティーCookieの利用制限に向けた動きが加速化したことを受けて、Cookieの代替ソリューションとして注目されるようになりました。

 

例えばCookieであれば、一人のユーザーがPC、タブレット、スマートフォンという3つの端末でそれぞれ別のブラウザを通じて一つのウェブサイトを閲覧すると、3ユーザーとして認識される可能性があります。これがIDソリューションを用いれば、1ユーザーとして正確に把握できるわけです。

 

仮にこのままCookieが利用できなくなったとすると、同じPCとブラウザを用いて異なる時間に5回にわたり同じページを閲覧したユーザーを5ユーザーとして認識してしまう可能性があります。すると、100ユーザーに対して広告を配信したつもりが、実は20ユーザーにしか届いていなかったという状況になりかねません。そこで、広告効果をCookieと同等またはそれ以上に高め得る手段としてIDソリューションが注目を集めているのです。

 

―「1ユーザーに対して5回の広告表示を必要としていたものが、正確に計測することで1回の広告表示で済む」のであれば、媒体社の広告収益は減るのではないでしょうか。

繰り返しますが、マーケターは自社の顧客となり得るユーザーを安く買い叩きたいわけではありません。そのユーザーに見合った金額で買いたいと考えているだけです。広告主が無駄なお金を使わずに済むようになれば、むしろ広告単価は上昇します。

 

媒体社にとって新たな課題が生じるとすれば、IDソリューションを通じてユーザー数を正確に把握できるようになれば、ユニークユーザーの質や量の重要性がより顕在化するということです。これまでPVや広告表示回数の多さを売りにしていた媒体への評価が変わるかもしれません。

 

―Cookieの代替技術としては、コンテキスト・ターゲティングも注目されています。

IDソリューションのデメリットを挙げるとするならば、その多くがメールアドレスに基づき名寄せをしているということです。つまり、法律によってメールアドレスを保護すべき個人情報として定めている国では機能しません。そうした国々では、コンテキスト・ターゲティングの相対的な利便性が高まるはずです。

 

またコンテンツ内容と親和性のある広告が表示されるというコンテキスト・ターゲティングの仕組みは、広告主と媒体社の双方に納得感と安心感を与えます。万人にとって分かりやすいがゆえに、売りやすい広告商品だと言えるでしょう。

 

ただ最終的に求められるのはやはり広告効果です。いずれのターゲティング技術がより有効であるかは、実際に広告配信を行った上で各広告主が判断を下すことになります。

 

―各社提供のIDソリューション間での違いはありますか。

正直なところ、IDソリューション自体の機能や思想は近しいものが多いです。IDソリューションベンダー各社はそれぞれのIDソリューションを通じてどのようなデマンドソースとつながっているか、独自のデータソースを付与し、プログラマティック広告での取引において広告主が求める広告効果に貢献できるかで差別化を図ることになると思います。

 

日本でSPOが本格化するのはこれから

 

―本調査結果を通じて、媒体社の多くが取引を行うヘッダービディング事業者を限定する傾向が強まっていることが分かりました。どのような背景があると考えますか。

市場をほぼ独占するアドサーバーに対してオークションプレッシャーをかけることができるヘッダービディングは、サプライサイドにおける革新的なソリューションと言えます。だからこそ、市場にこれだけの規模で浸透したのでしょう。

 

ただし、ヘッダービディングの普及によるトラフィック急増への反発として、今度はサプライパス最適化(SPO)が進行しました。例えば1ユーザーが5個の広告枠に接すると広告表示リクエストは5回行われます。そこに3つのラッパーソリューション(複数のヘッダービディングをまとめたもの)を導入すると、広告リクエスト数はさらに3倍。各ラッパーソリューション内に10のヘッダービディング企業が含まれているとまたさらに10倍で、一人のユーザーに対してDSPが受け取る広告リクエスト数は総計150回にも達します。

 

つまりDSPにとっては、リーチできるユーザー数は変わらないのに、膨大なトラフィックに耐え得るインフラの維持費だけが爆発的に増加したのです。その結果、DSPは広告リクエストが流れるパスを厳しく選別するようになりました。すると媒体社も、使われることのなくなったパスにつながるヘッダービディングを削らざるを得ない。これが世界で進行中のSPOの実態です。ただし、日本ではまだ始まったばかり。本格的なSPOの動きはこれからです。

 

本調査では84%の広告主、または代理店が過去18カ月以内にSPOに関して見直しを行い、また向こう6カ月以内に実施する計画があると言っています。セルサイドはバイサイドの動きも把握しておきたいところです。

 

日本市場ではサプライパス最適化の浸透率がまだ極めて低い

 

―SPOが進むと、どのような変化が起きると思いますか。

とりわけブラウザ上でオークションを実行するヘッダービディング技術においては、ビッダー(ヘッダービディングに参加している広告配信企業)のパフォーマンスは向上します。

 

例えばChromeのブラウザ上にて同時並行で処理できるライブラリの数はせいぜい7か8つ。10、20単位のビッダーを同時に競争させることは不可能です。SPOが進んで処理可能な数だけに絞り込むことで、ヘッダービディングが本来目指していた公平なオークションが実現する環境が整います。

 

またSPOが進むと、流通の透明性やアドフラウドの防止への意識が高まります。プラトフォームには、より品質、信頼性の高さが求められることとなるでしょう。

 

―本調査結果によると、オープンソースのヘッダービディングであるPrebidの利用率が高まっているようですね。

とりわけ日本市場ではPrebidの導入率が高い。ヘッダービディングを導入していてPrebidを使っていない媒体社はないのではと思うぐらいの規模です。その背景としては、Prebid.orgのボードメンバーであるグローバルのプラットフォームだけでなく、メディアレップやパブリッシャートレーディングデスクといった、日本市場に特有の再販事業者の存在の大きさが挙げられます。これらの再販事業者がPrebidを担ぎ、きめ細かい運用サポートとともにサービス提供したことが大きく貢献しているのではないでしょうか。

 

プログラマティック広告の優位性とは

 

―本調査結果が提示する各国の特徴的な傾向について気になる点はありますか。

率直に申し上げると、まず日本市場の動きが遅い。北米や欧州だけでなく、他のアジア諸国と比べても遅れていると思います。アドフラウドやSPOといった課題をかなり早い段階で認識しているにも関わらず、その対策の実施段階で二の足を踏んでしまう。アーリーアダプターの数が少ないのでしょう。実行に必要な根拠やデータを私たちベンダー側が十分に提供できていないのかもしれません。

 

またプログラマティック広告に対するマーケターの支出が低いことも気になります。北米や欧州ではデジタル広告支出全体の8、9割を占めることも決して珍しくないですが、日本では3~5割程度。ウォールドガーデンと呼ばれる大手プラットフォームに出稿すれば日本国内のターゲットをほぼカバーできると考えているからではないでしょうか。

 

他のアジア地域との比較においても日本のプログラマティック支出割合は低い

 

プログラマティック広告の優位性を正しく理解している媒体社も少ないと思います。当社を含むオープンウェブ向けのソリューションやサービスを用いれば、どの広告主または広告代理店がいくらで広告枠ないしユーザーを購入しているかを把握することができ、それらを純広告の商品設計に活かすことができるはずなのです。

 

―広告主側の需要を踏まえた広告販売ができるということですね。

世の中全体としては、まず消費者の需要を捉え、それに見合った商品開発を行い、在庫を整えていくという流れが一般的です。ところが、オンライン広告業界はまず「広告を買う」という行為が優先され、商品設計はないがしろになりがちという奇妙な構造となっています。

 

このような市場の歪みを正すべく、当社はデマンド側とサプライ側の距離を埋めるテクノロジーパートナーでありたいと考えています。プログラマティック広告市場で媒体社の皆様により良い成果をあげて頂けるよう、当社を「社内データベンダー」と位置づけて使い倒していただけたら本望です。

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クッキーレス時代の広告プランニングに求められる意識変化とは?[ABEMA×ビデオリサーチ対談]

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今までのデジタルマーケティングは、行動データをもとに効果の出やすい関与度の高いユーザーに絞ってリーチを行うケースが多かった。

しかし昨今、その仕組みを支えてきたサードパーティクッキーやIDFAによる個人データ収集についてプライバシー保護の観点から利用制限が進んでおり、従来の追跡技術だけに頼っていては近い将来に効果的なマーケティングを行うことが難しくなってくるのは確実である。

そこで今回、クッキーレス時代の広告プランニングにどのような意識変化が求められるかについて、メディアとリサーチ会社それぞれの立場で広告マーケティングに携わるAbemaTVの小島 功氏とビデオリサーチの吉田 正寛氏の両氏が対談を行った。

 

個人追跡に頼らずとも効果を得るためには

小島氏:クッキーレス時代の広告に関し大きく懸念されることの1つとして、今までのようにメディア横断でのユーザーデータを活用した配信をすることが難しくなるため、従来の「人」単位での追跡技術だけに頼っていては顧客獲得の“チャンス量”が減少してしまうという点があります。そういったことも踏まえて、今後の広告プランニングに求められる意識変化は以下2点ではないかと考えています。

 

 

吉田氏:今までは個人を追跡することによって効果を上げるケースが多かったため、①のような場所自体の品質に対するケアがやや疎かになっていても問題になりにくいところがあったのですが、今後はそうはいかないですよね。

 

小島氏:そうですね。クッキーレス時代においても顧客獲得の“チャンス量”を減らさないためには、まず個人追跡に頼らずとも誰にアプローチしても見てもらえること、つまり受容性の高い広告であることが重要な前提条件だと考えます。そしてその受容性の大きさにはメディアの信頼性評価が大きく関わっています。

私が過去に行った調査では、メディアの発信している情報を信頼している人はそこで流れる広告に対する“広告認知率”や“メッセージ認知率”が高くなりやすいというデータがあります。広告が期待される役割を果たすには、まずその広告がユーザーに受け入れられ、そして記憶に残してもらうことが必要であり、こういった受容性はその先の効果を得るための重要な先行指標といえます。つまり、個人追跡に頼らずとも効果を得るには、ユーザーから見たメディアの信頼性評価を注視することが今後さらに重要になってくるでしょう。

 

 

あとは、その信頼性という前提の中でもできるだけ効率よくターゲットに広告を届ける必要がありますので、②をどう実現するかについても今後の広告プランニングにおいて求められるキーの1つになると考えています。

 

吉田氏:②については、「人」から「枠」へという最近のデジタルマーケティングの潮流もあり、「枠ごとの価値をいかに可視化し広告主に提供するか?」という点にわれわれは注目しています。地上波市場をみても、従来は視聴率に代表される量指標がその価値の表現方法の主流でしたが、最近では質的側面にも注目が集まっており、なかでも「枠」ごとの来訪者特性の可視化に力を注いでいます。その流れもあり今回、インターネットテレビである「ABEMA」と「地上波」について、各視聴ログをもとに弊社の生活者データACR/exを掛け合わせ、同条件下にて「枠」ごとの来訪者特性を比較・分析する調査を行いました。

すると、われわれにとっても大変興味深いデータが得られたのです。

「枠」ごとの価値をいかに可視化し広告主に提供するか

吉田氏:以下は「枠」ごと(チャンネル×曜日×時間帯別)に自動車の購入意向を持つ視聴者の割合を可視化したグラフになり、上は「地上波」のみのデータをカラースケール化したもの、下はそこに「ABEMA」のデータも含めた形でカラースケール化したものです。

 

 

面白いのは、「地上波」の中だけで比較すると枠ごとの濃淡がはっきり出ていたものが、そこに「ABEMA」を加えることで「地上波」の濃淡が平坦化し、「ABEMA」の濃淡が鮮明化するという点です。言い換えれば、「地上波」に比べて「ABEMA」のほうが枠ごとの濃淡の幅が非常に大きいということです。

 

小島氏:「ABEMA」の最大値から最小値を引いた差分が、「地上波」の差分に比べて4倍以上になるというのはすごい数字ですね。

 

吉田氏:実はこの濃淡の幅の大きさの違いは、自動車だけでなく、コスメやアルコール、ゲーム、保険など他のさまざまな業種でも同じ傾向が見られ、また、職種でいえば公務員の含有率などについても同様でした。これらの傾向にはある特性が表れていると考えられます。それは、生活者の可処分時間の使い方が多様化する中で、「ABEMA」が提供しているようなバーティカルなコンテンツの「枠」はマスメディアである「地上波」の「枠」に比べて視聴者の趣味嗜好の偏りが出やすいということです。つまり、そういったメディアをうまく活用し相性の良い「枠」をしっかり捉えることは、クッキーレス時代において効率よくターゲットに届け効果を出すための手法の一つになりうるといえます。

実は弊社のメンバーの中に、M.LEAGUE(麻雀プロリーグ戦)開催時期を中心に「ABEMA」の麻雀チャンネルをかなり視聴している者がいるのですが、普通に接しているだけでは気づけないくらい競馬とゲームにかなりハマっているユーザーなんです(笑)。これは私の中で、視聴コンテンツを起点に嗜好性を捉えるというターゲットアプローチのイメージが湧く身近な例です。

あとは、コンテンツメディアのこの特性を広告ソリューションとしていかに広告主に提供できるかが重要ですね。

 

小島氏:「ABEMA」では、この特性を活かした広告プロダクトにすでにチャレンジしています。簡単にご説明すると、購買などの行動データを参照しながらも「人」単位ではなく「番組」単位でリーチすることで、行動データ上には存在しない人も含めてターゲットと考えられる多くの人にリーチすることを狙ったものです。これは個人を追跡するわけではなく、ユーザーのプライバシーを守りながらもターゲット精度とリーチ量を担保できるものとして考えた方法であり、従来の「人」単位でのオーディエンスターゲティングと並行して配信したケースにおいて、ほぼ同等の購買率増加が確認できた事例も出ています。

 

吉田氏:なるほど。その事例はまさに、相性の良い「枠」をしっかり捉えることができれば効率よく効果を出せることを示していますね。

ビデオリサーチ社の生活者データベース「ACR/ex」の結果を見ると、「ABEMA」は他動画サービスに比べて「自分向けの広告だと感じる」という評価が高いというデータが出ており、こうした「番組」単位で捉える手法が適正ターゲットへのリーチとして機能しかつユーザーに受け入れられているということを反映しているのかもしれませんし、最近よく耳にする「嫌われない広告」を実現する1つのアプローチなのかもしれないですね。

個人データの規制強化を機に発想の転換を

小島氏:クッキーレスの時代を迎える中でさまざまな代替ソリューションが検討されていますが、「枠」単位で消費者の特性を捉えることの有用性が確認できた今回の調査結果は非常に有意義なものでした。

 

吉田氏:生活者が多様化する中でコンテンツ接触の好みも多様化し、そのコンテンツへのロイヤルティの高まりをうまく広告に連動させることはこれからの潮流になってくるでしょう。この考え方を推進することで、クッキーレスの時代に合ったより有用なセグメンテーションもさらに可能になると考えています。

 

小島氏:そうですね。今回の個人データの規制強化は、広告主による本質的な広告投資を実現するという思想を業界全体で再確認する機会だと考えており、われわれもさらに有用な広告プロダクトを提供するためのチャレンジを続けていきたいと思います。

本日はありがとうございました。

 

 

小島 功(こじま こう)氏
株式会社AbemaTV
ビジネスディベロップメント本部 プロダクトマーケティングスペシャリスト
2003年にサイバーエージェントに入社し「アメブロ」のデザイン制作やマネタイズ業務などに携わる。2016年より「ABEMA」の広告商品開発や価値証明を担当。

吉田 正寛(よしだ まさのぶ)氏
株式会社ビデオリサーチ
ソリューション室マーケティングソリューション部 シニアエキスパート
2008年(株)ビデオリサーチ入社。主にメーカー等の広報・宣伝担当部署や広告会社・媒体社営業担当部署をクライアントに、広告プランニングや広告効果測定をコンサルティング、メディアの広告役割の観点から次期広報・宣伝施策を第三者の立場でサポート。広告メディア・コンテンツ別にある固有の役割に関する研究を継続。

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YouTubeマーケティングでやるべきこと、やらぬべきこと[著者にインタビュー]

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近年企業におけるYouTubeを活用したマーケティング活動は急速に広まっており、もはやWebマーケティングにおける定石の一つともなりつつある。
このチャネルを活用し、そのビジネスを拡大させる企業もあれば、多額のコストを費やしても結果につながらないことや、ともすれば炎上してブランドイメージを毀損してしまうような実例も見受けられる。
企業はYouTubeを活用したマーケティングにどのように取り組むべきであろうか。
市場調査レポート「2021年版 企業のYouTubeチャンネル 取り組みと活用方法」の制作において、国内外141企業の事例をとりまとめたシード・プランニング 長野 光研究員が、調査を通して得た気付きを語ってくれた。

 

 

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下 智之)

 

 

-この調査レポートで取り上げた141事例のうち最も印象に残っているものについてお聞かせください

YouTubeを活用する大小企業の141社の取り組みと戦略を取りまとめた調査レポート。

まず国内でいうと南雄太さんという人のYouTubeチャンネルが印象的です。彼の職業は精神カウンセラーなのですが、今精神科医や精神カウンセラーのチャンネルがとても増えています。私は、これはYouTubeのビジネス活用における成功事例であると思っています。結局彼らは喋ることが沢山あります。

ADHDの人、引きこもりの人など色々な心の葛藤を抱えている人たち向けに、あるいはそういう人を家族や友人、恋人に持っていたりして悩んでいる人向けに、相手との接し方や寄り添い方を喋っている内容のものが多いのですが、これらはいずれも再生回数が高いのです。そしてこの南雄太さんは、カウンセラーなのですがそういう動画をいくつも上げており、これらいずれの再生回数も高い。また、この方はコロナ禍においてオンラインカウンセリングをやっていますが、動画を見た方からのカウンセリングの申込が今殺到しているとのことです。

YouTubeチャンネルには、彼自身の生い立ちから何から書いてあり、非常に見ごたえがあり、親しみが持てる内容となっています。これは国内の方がやっているものとして、非常に印象的な事例です。

次に海外の例でいうと、米国のミズーリ州セントルイスに、VAT19という会社の取り組みが挙げられます。この会社は面白ギフトのみを扱っている会社です。箱を空けると変なものが飛び出してくるものや、パーティーグッズなどで変わったものしか扱っていない、ECサイトを運営するお店です。4-5人のスタッフが演技者になり、それらのグッズを使った4-5分の寸劇のようなものを動画で撮影してアップしています。

そもそも面白グッズ自体に人は興味がありますので、人々は興味を持ちます。また、寸劇をやることで、かわいらしいイメージを視聴者に植え付けており、会社の好感度UPにもつながっています。「ああ、こんな会社だったら働いてみたいな」というような非常に無理なく、YouTubeをうまく活用していると感じた事例です。プレゼントに悩んだ米国の人々がここに見に来て商品を購入するというような具合で、おそらく相当商品は売れているのではないでしょうか。

 

【VAT19の動画(一例)】

 

-どのような企業がYouTubeというプラットフォームをうまく活用していますか?また共通点はどのようなことでしょうか?

私の見た感覚では、企業のYouTube活用は、大企業よりも中小企業が圧倒的に成功しています。なぜ中小企業のほうが成功しているのかというと、「速い」、「面白い」、「制約が少ない」、そして「無駄なことをしない」からです。

中小企業の場合リソースの制約もあり、その動画には社員が登場します。そうするとその社員がまず好かれてファンが出来、ビジネスにプラスの効果をもたらします。そして、リクルート活動にも好影響を与えます。また、社員が動画を楽しみながら作ることで、その会社を好きになる要因ともなり得ます。

親しみやすさという点でいうと、「メガネショップアイ 尼崎店」というところがあります。ここはショッピングセンターの中にある小さな眼鏡屋さんなのですが、そこはいろんなメガネを紹介しており、メガネのトリビアを開設している動画をアップしています。この店長にインタビューをすると、「動画を見て広島から会いに来ました」というようなお客さんもいるとのことで、その効果を感じているとのことでした。

 

リクルートに効果があるという話として面白かったのは、孤独死など人が亡くなった後に清掃をする「ブルークリーン」という特殊清掃の会社が東京にあります。この会社は、これまでにあったエピソードをアニメ動画にしてYouTubeにアップしています。これが面白くて例えば誰も住んでいないごみ屋敷のように汚い部屋を掃除していくと拳銃が出てくるという話をはじめ、色々なエピソードを挙げている。このような動画をアップし続けていくうちに、「お宅で働きたいです」という人が来るようになったとのことです。

この会社の方の話によると、普通にリクルートした人は、仕事の特性上、そのキツさから、すぐにやめてしまう人も多いとのことです。YouTubeでこの会社の動画を見続けて入社した人たちは、ある意味この会社の仕事のことを知っているわけです。これから大変な仕事が待っているという心の準備が出来ています。そしてモチベーションも高く、比較的優秀なスタッフが集まってくるとのことです。

 

社員が動画を楽しみながら作りその会社のことを好きになるというケースについては、大手企業においてみられました。ペンタブレットを作っているワコムという会社があります。アニメのクリエイターなどがキャラクターを描くペンを提供しています。ここのYouTubeチャンネルでは有名なクリエイターの方に来てもらって、ワコムのペンを使って絵を描いてもらうのです。

有名なクリエイターがワコムのペンを使って絵を描く一連の流れを紹介した後に、そのクリエイターに対するインタビューもしています。そして、自社の㏋への誘導枠を設けて、そこから商品の販売を促進しています。

 

大企業の取り組みでうまくいかない理由の一つは、無駄にコストをかけているということです。テレビの広告作りと同じ感覚で、YouTubeではユーザーが求めていない、美しいイメージショットのようなものを作るわけです。これをYouTubeで見ている側からすると、「あれはテレビだから仕方なく見るのであって、わざわざ視聴もクリックもしないよ。」ということになります。

また、作り込まれている動画からは、親近感は湧きません。ユーザーから共感を得るには、ラフな動画のほうが逆に良かったりすることもあるのです。

大企業の場合、一つのチャンネルに色々な種類のコンテンツがあり過ぎて、どんなコンセプトのチャンネルであるかが分からないケースが多々見られます。社員が会社の好きなところを語っている動画もあれば、昔からいる古株のスタッフが会社の歴史を語っている動画もある。またその一方で商品のコマーシャル動画があり、その会社のプロダクトが好きだという芸能人が出てきて商品を語る動画があり・・というようなチャンネルの場合、定期的にユーザーが訪れるということは少ないでしょう。また、炎上を恐れて色々な部署や立場の人のフィルターがかかるので、卒がないけれども面白さに欠ける傾向があります。また、動画を出すスピードも遅い場合が多いようです。

 

一方で、もちろんうまくやっているところもあります。分野でいうと、人材系の会社はとても上手くやっています。例えば代表例を挙げるとビズリーチがあります。YouTubeの中で番組を作り、金融業界、広告業界など、業界ごとに複数の企業を呼んで、そこで人を募集するという動画があります。動画ではそれぞれの企業が自分たちの会社の良いところをプレゼンしてもらうのです。そうすると、チャット画面に見ていてその会社に入ろうかと考えている人たちから、質問を投げかけられます。福利厚生や保険、男女比率、残業に対する考え方などの投稿質問を受けて、司会がそれを各社に振っていきます。ビズリーチに限らず人材系の会社はこれをどこもやっていて、非常に見ごたえのあるコンテンツとなっています。

 

あと、「この分野も強いな」と思ったのは、学習塾・予備校です。受験というのはやはりテクニックが相当求められるものです。精神的な自分の感情コントロールも求められますし、日々どのようにうまく勉強をするのかということもあるし、ここはあまり力を入れる必要がない、というような戦略的なこともあります。これらのことを、講師がYouTubeに出てきて説明をする動画が数多くアップされています。今日5分で覚えておくべきポイントであったり、参考書の書評であったり、大学別の攻略方法であったりというようなノウハウを少し教えるような動画は、多くのユーザーを集めています。結果として学習塾・予備校の集客に大きく寄与しているものと思われます。

 

-企業がYouTube動画を活用したマーケティングで成功するにはどのようにすべきですか?

ただ楽しいコンテンツではなく、ためになる、知識が学べる・勉強になる、やってみたくなるという要素が含まれていると、ユーザーに支持を得やすいです。
そして、作る側の人たちが飽きずに続けられること。これもとても大切なことです。自分たちの興味にリンクしていたり、自分たちが学ぶことがあったりすることが重要になって来ます。動画を作っている人たちにインタビューをしていても「結構しんどいです」というコメントがあったりすることもあります。誰かに動画制作を依頼するとき、作る側に、「これだったら飽きずに楽しめる」という要素を盛り込んであげるということを大切にするべきです。

そしてもう一つ重要なことは、「ネタ切れで困ることがない」ということ。先述の通りチャンネルのテーマを絞る必要はありますが、逆に絞ることによりネタが尽きやすくなりますが、尽きてしまうようなものだと困るということです。チャンネルを開設する前の構想段階でこれらのことを織り込んでおく必要があります。

 

また、明確なコンセプトで同じ種類の動画を沢山出すことが必要です。ユーザーが、「あそこのチャンネルに行くとこういう情報が得られる」ということが明確であることが、望ましいです。これを実践している最高の事例の一つは、「日本さばけるプロジェクト」です。これは日本財団がやっている、海産物の尊さとその文化を伝承することを目的としたプロジェクトです。服部栄養専門学校と組んで、魚のさばき方をとてもきれいな動画でひたすらアップしており、人気を博しています。

 

 

【日本さばけるプロジェクトの動画(一例)】

 

動画制作において気を付けるべきは、会社のイメージを毀損しないものであること。面白いものを作ろうとして、頑張り過ぎてしまうと、過激なものになり過ぎます。単に下品やおバカが駄目であるということではありません。下品でもおバカでも人を傷つけないようにやれば、それはまた一つ会社の良いイメージを形成する上での助けにもなります。
好例を挙げると、大阪にあるラムエイという不動産屋の事例があります。ここは面白物件紹介の動画をアップしているのですが、これが面白いのです。声のトーンやスピードを変えるなどしていて、変な感じで紹介をしており思わず笑ってしまうのですが、見ていると徐々に引き込まれてしまいます。これらの動画は多くのユーザーに視聴されており、結果大きな集客効果につながっているとのことです。

 

-動画の炎上リスクに対してどのように対策を講じておくべきでしょうか

まずはどのようなケースで炎上が起こるのかについて、予めパターンを想定しておくこと。そして、炎上したときの対応をする担当者を決めておくことも重要です。単に「炎上したら動画をパッと消せばいいであろう」という考え方は誤りです。すぐに消さないで、寄せられたコメントに対して、丁寧にコメントを返し続けることが望ましいです。
また、動画を消すのであれば消した後に、その動画をなぜ消したのかを説明して謝罪をする動画をアップするというような対応が必要です。

 

動画は、ふつう人が中心となって喋ることが多いのですが、企業動画の場合、コンテンツとしてあまり特定の人に頼りすぎないほうが良いでしょう。そこに出てくる人のトークが面白いから視聴されるというのは、確かにチャンネルの再生回数を増やすことにつながります。ですがもしその人がいなくなってしまうと、そのチャンネルは一気に廃れてしまいます。ですので、企業のチャンネルは数名で回しておくか、顔を出さずに声だけでやっておくというようにした方が、長期的にはよいのです。

コンセプトやコンテンツが面白ければ、極端なところ誰が喋っていてもユーザーにとって魅力的なものになるはずです。企業で動画コンテンツを発信するのであれば、「この人が面白いからこの人に任せよう」ということは、出来るだけ避けたほうが良いと、私は思います。

 

また、何かを批判するコンテンツというのは、自分が回らなくなったときに苦しくなります。ビジネスが非常に絶好調で、その企業のYouTubeチャンネルも絶好調なときは構わないですが、ビジネスがうまく回らなくなったときに動画で偉そうなことを言っていると印象が悪くなりますので、これはリスクとなります。

 

そして、動画制作が担当者の通常業務に支障をきたさないことも大切です。楽しくなりすぎて、のめり込んでしまうことで、そればかりやらないようにすることは気を付けるべきです。

 

また、あまり考えたり調べたりすることなく無難なコンテンツを並べると、非常に寒い場となってしまいます。「あそこがやっているからうちもやろう」ということで始めるのは、あまり望ましくありません。例えば美容室がカットを見せる動画はみんなやっています。これを今からやり始めてもつらいところです。大きなメディアや企業がやっているチャンネルで全然見られていないような動画がありますが、これは単に上からやれと言われたからやっているであるとか、他のところを見てうちもやってみようという感覚で始めたのではないかなと思います。

 

そして当たり前のことではありますが、ステルスマーケティングも気を付けるべきです。批判の声が上がらなくても、見ている人にそういう印象を持たれてしまった時点でイメージダウンにつながります。ステルスマーケティングではなくとも、それっぽいものも気を付けるべきでしょう。

なお、長野光調査研究員は現在シード・プランニングにおいて、書籍の著者を対象にしたYouTubeチャンネル「著者にインタビュー」を主宰・運営しており、国内外の様々な分野の著名や著者にインタビューした結果の動画を継続的にアップしている。

 

【シード・プランニング 「著者にインタビュー」の動画(一例)】


 

 

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広告枠最適化の時代に突入-Browsiと神戸新聞社が取り組むビューアビリティ保証とは[インタビュー]

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アドテク技術の発展に伴い、配信面、入札価格、クリエイティブといった広告に関わるあらゆる要素が自動最適化されてきた。次なる最適化対象は、広告枠そのもの。イスラエル発のテクノロジー企業であるBrowsiが開発したソリューションを用いて、広告枠設置の自動化やビューアビリティ保証といった先進的な取り組みを行う神戸新聞社に話を聞いた。(Sponsored by Browsi)

 

全社的なDXに取り組む新聞社

 

―自己紹介をお願いします。

 

神戸新聞社デジタル推進局WEBマーケティング部に所属する初瀬川文範と申します。主に当社が運営する「神戸新聞NEXT」「デイリースポーツオンライン」「まいどなニュース」「よろず~ニュース」の4媒体の広告運用を担当しています。また神戸新聞社としてはDX戦略本部を立ち上げ、全社的にDXに取り組んでいる真っ最中です。

 

―会社全体としてデジタル化に取り組んでいるのですね。

 

当社では記事の外部提供をかなり早い段階から開始するなど、とりわけデジタルコンテンツの収益化には積極的に取り組んできました。国内で実績のない新規ソリューションを率先して試す企業文化もあり、「レガシーメディア」と呼ばれることもある新聞媒体としては稀有な存在だと自負しています。

 

コンテンツ特性の違う4サイトを運営しておりますので、最適と思われるサイトで検証を行い、良い効果が出れば他媒体にも横展開するという方式で新しい施策を試すことが多いです。

 

―ウェブサイトの収益化全般に関わる課題意識についてお聞かせください。

 

大きくは「いかに多くのアクセスを集めるか」と「いかに広告単価を上げるか」の2点に尽きます。いずれかの視点が欠ければ、収益を最大化させることはできません。「どのようにトラフィックを集めて、そのトラフィックをいかにマネタイズするか」と言い換えてもいいかもしれません。指標としては、RPM(広告表示1,000回あたりの収益見積り)を最重視しています。

 

また今年8月に薬機法が改正されて、虚偽・誇大広告に対する取り締まりが厳重化されました。その影響の如何を注視しつつ、コロナ禍での一度下がった広告単価をいかに引き戻すかを直近の課題として受け止めています。

 

―普段はどのような業務に従事しているのでしょうか。

 

まず「いかに多くのアクセスを集めるか」という点については、編集部、技術部と定例の会議を開き様々な施策を検討しています。編集部も非常に協力的で、負荷が大きい作業であっても前向きに話し合いが出来ています。

 

一方の「いかに広告単価を上げるか」については主にWEBマーケティング部の業務領域となります。広告枠の位置やフォーマットの変更、ヘッダービディングやレイジーロード(ページ全体の表示を速めるために広告など一部のコンテンツを遅延読み込みする技術)の導入といった作業の設計、実装、検証をすべて自社内で賄っています。

 

広告枠の位置変更を繰り返す日々の果てに

 

―日常的な業務においてはどんな点に最も苦労されていますか。

 

私どものWEBマーケティング部でオペレーションに従事しているのは私を含めて4人です。つい最近まで事実上2名で4サイトの収益化を担当していました。この少数体制で取り組むべき優先事項を整理することが常に求められています。

 

最近までとりわけ苦労していたのは広告枠の位置やフォーマットの調整です。100以上ある広告ユニットを管理しておりますので、毎日のように仮説を立てて変更を行ってはGoogle Ad Manager(GAM)を通じて細かくレポーティングを引っ張ってきて、収益が上がった/下がったかを検証し、また次の仮説の検証という作業を繰り返していました。また大きな変更を行う際には編集部の了解をその都度得る必要もあったので、その打ち合わせなども含めると相当な時間を割いていたと思います。

 

何よりも、こうした試行錯誤を繰り返したことで思いつく限りの調整はある程度までやり尽くし、既存の広告枠を通じた運用が頭打ちになりつつあるのではないかとの危機感を覚えるようになりました。

 

―その状況をいかに打開したのでしょうか。

 

結論から言うと、Browsiという広告最適化ソリューションを導入するに至りました。各ユーザーのビューアビリティの予測値に基づき、ページ内にリアルタイムで最適な広告枠を挿入するこのソリューションによって、先に述べた課題の多くは解決するのではないかと考えたからです。

 

ただ本ソリューションではユーザーごとに広告枠の最適化を行うので、Aさんには広告が一つしか表示されないけれど、Bさんには5個も表示されるということがあり得るわけです(最大個数は任意の値に制御可能)。収益化の観点だけでなく、ユーザービリティにどのような影響があるかを含めて実際に試してみないと分からない点があったので、まずはトライアルを行いました。

 

―大きな変更を加える際には編集部の了解を得る必要があるとのことでしたが、その編集部は広告最適化ソリューションの導入に賛成したのですか。

 

魂を込めて書き上げた記事の中に広告が自動的に挿入される様子を見た編集部員からは懐疑的な意見が多くありました。管理画面を通じて記事中に広告枠を入れないという設定を行うこともできるのですが、ともかく従来の固定観念を覆す可能性もあったので、まずは一つのカテゴリに絞ってトライアルを実施することにしたのです。

 

具体的には、「デイリースポーツ」のコラムカテゴリは記事の文字数が多く、検証に適していると判断し、まずはこのコラムカテゴリでの実証実験を始めました。

 

Browsiの管理画面。記事内に挿入する広告枠の数や位置を設定することができる

 

RPMが120%向上

 

―その結果についてお聞かせください。

 

導入後すぐに大きな成果が出ましたので、コラムカテゴリ以外のページを含めより多くのトラフィックを当てて検証を続けました。

 

本格導入後はRPMが120%上昇。PrebidやTransparent Ad Marketplace(TAM)といったヘッダービディングに対応できている点も大きかったと思います。この結果を受けて、今では「神戸新聞NEXT」「デイリースポーツオンライン」「まいどなニュース」の3媒体の全ページに適用しています。

 

―広告枠の設置作業が自動化されたことで、作業の手間を削減できましたか。

 

既存の広告枠は残したままで、それ以外のスペースに対してBrowsiを適用しているので、従来の広告枠は今でも人力での調整を行っています。ただ新規広告枠を設置する度にGAMを通じてレポーティングを引っ張ってきて検証することはなくなりました。

 

そもそもユーザーごとに広告枠の数や位置が異なるので、新規広告枠ごとの検証を行うことが非現実的です。現在はBrowsiの管理画面を通じて、新規広告枠の全体的な成果を把握するようにしています。

 

―新規ソリューション導入によるユーザービリティの影響はありましたか。

 

まず、ブラウザを対象としたあらゆる新規ソリューションの導入時に課題となるレイテンシーは発生しませんでした。正確に言うと、当社ではヘッダービディングを導入したことによる広告のレイテンシーについてはまだ解決に向けて取り組んでいる最中なのですが、Browsi導入によって顕著になったということはありません。

 

またBrowsiが挿入する広告枠はオープンオークションに流しているのですが、現在に至るまで、ユーザーの嫌悪感を催すような内容の広告は表示されたこともありません。本ソリューション導入と関連した問い合わせやクレームも届いておりませんので、ユーザービリティに対する影響は軽微であったと判断しています。

 

ビューアビリティ保証広告商品ができるまで

 

―Browsi導入による変化や影響は他にありましたか。

 

広告枠の自動挿入機能とは別に、ビューアビリティ予測機能を活用しています。Browsiが挿入した広告枠におけるビューアビリティの予測値が、Key Value(媒体社独自の条件を定義する項目)としてGAMに入ってくる仕組みです。

 

レポート内容を確認すると、予測値と実測値に乖離がない。むしろ70%の予測値に対して実際には80%が計測されたといった具合に控えめな予測値が出ることの方が多いようです。

 

そこでこの機能を最大限に活用すべく、当社ではビューアビリティ保証の純広告商品を開発しました。

 

―ビューアビリティはデジタル広告運用に精通した広告主が注視する指標であり、媒体社側が前面に押し出す例はまだ少ないのではないかと想像します。

 

それは媒体社が今まで技術的にビューアビリティを保証することができなかったからです。「この枠は過去の平均値としてビューアビリティが80%の実績を残しています」という案内はできます。しかしながら実際に蓋を開けてみれば、大きく上振れまたは下振れするということが往々にして起き得るわけです。

 

ただBrowsiのソリューションを用いれば、リアルタイムの精緻な予測に基づき、「80%以上のビューアビリティを確保できる広告枠にだけ広告を配信するという作業の自動化」が可能です。広告主が求めているのは将来の確実な見通し。実績をベースにした見込みの商品よりも、正確な予測値に基づくビューアビリティ保証商品の方が需要はあると考えました。

 

―広告主の反応はいかがですか。

 

今年の春先にお試しいただいた広告主様から秋も続けて受注するなどの評価はいただいています。一方で「ビューアビリティって一体何ですか」と質問される機会も珍しくありません。

 

ただ「広告がどのように見られているのか」「リーチしたい層に届いているのか」といったことに関心を示す広告主は多く、そうした懸念を取り込みながら今後はビューアビリティへの意識が各段に高まっていくはずです。当社としては早い段階で対応できる環境を整備することで有利な立場を築き、広告主様にはビューアビリティ保証の有無による広告効果の差を実感していただけたらと思っています。

 

―将来を見越した取り組みという位置付けですね。

 

私どもパブリッシャーの間では、ビューアビリティの重要性はかなり早い段階から指摘されてきました。それでもいまだに課題視され続けているのは、ビューアビリティを高める努力をしても、その努力を広告商品として生かす方法が無かったからと考えています。ビューアビリティ保証広告を普及させれば、デジタル広告業界全体に好作用を及ぼすことになると信じています。

 

また将来を待たずとも、例えばAdsenseのようなCPC広告をビューアビリティの高い枠に流すことで、有効なクリックを増やすということは今すぐにでも実施できる施策だと思います。

 

―今後はどのような展開を考えていますか。

 

ビューアビリティの予測値に基づくアドエクスチェンジの最適化を図る予定です。またレイジーロードは内製のJavascriptを用いてきましたが、Browsi独自のレイジーロード機能もあるので、当社の仕組みを乗せることでの効率化も検討したいと思います。

 

さらにはBrowsiを導入したメディアをまとめ上げたPMPを作りたいとの相談をSSPから受けて詳細について現在協議中です。今後はSSP経由でも高単価のビューアビリティ保証広告商品を販売できるようになるでしょう。

 

Browsiについての問い合わせや詳細はこちらから

 

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レコメンド事業者と競合しない?―Outbrainが語るCookieless時代の競争戦略

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レコメンドウィジェット創世期に日本市場への進出を果たしたOutbrain。彼らが先導したレコメンド市場は今、コロナ禍、Cookie制限、薬機法改正など様々な事象の影響を受けている。今後の競争戦略について、昨年10月に日本法人のマネージング・ディレクターに就任したばかりの上野正博氏に聞いた。(聞き手:ExchangeWire Japan 長野雅俊)

 

グローバル展開に強み

 

―自己紹介をお願いします。

 

Outbrain Japan 株式会社マネージング・ディレクターの上野正博と申します。株式会社リクルートを経て、ダブルクリック株式会社の代表取締役社長、トランスコスモス株式会社の常務取締役、オーバーチュア株式会社の代表取締役社長、CRITEO株式会社の代表取締役、BuzzFeed Japan株式会社の代表取締役社長などを務めてきました。2020年10月より現職に就いています。

 

―改めて事業概要をお聞かせください。

 

レコメンド事業者は多数いますが、「お勧めの記事や広告をレコメンドする機能を提供する」という点においてはすべて共通しています。その中で、各社がレコメンドの精度を競い合っている状況です。

 

当社の一番の特徴は、やはりグローバル展開を行っていることでしょう。日本の媒体社様が持つ広告配信面に対して海外の広告予算を引っ張ってきたり、日本の広告主様が海外で広告展開する際にそのノウハウを提供できることに強みがあります。

 

また日本の媒体社様がサイトリニューアルを検討する際に、成功事例についてお話しいただけそうな当社の海外取引先をご紹介するといった支援も行っています。

 

さらに日本では、2017年にOutbrain本社が買収したDSP事業者であるZemantaも展開されています。

 

―現在のレコメンド広告市場をどのように捉えていますか。

 

コンテンツ制作を生業とする媒体社様だけでなく、ブランド広告主様が運営するオウンドメディアとの取引が徐々に増えてきました。またかつてのように、レコメンド広告枠は必ずしも記事下に設置されるものばかりではありません。当社ではアウトストリーム動画広告フォーマットやSNS仕様に対応した「Native Awareness+」という広告プロダクトを既にリリースしています。レコメンド広告が意味するものは、拡大してきていると実感しています。

 

ちなみに当社はこれまでミドルファネルを得意領域としてきました。つまり、魅力的なストーリーと詳細な商品内容を記した記事広告をレコメンドし、その後はリターゲティングを経て資料請求に至るといった流れを作ることに貢献してきたという自負があります。動画広告を扱うことで、アッパーファネルも網羅できるようになるはずです。

 

やせ我慢がついに実った

 

―レコメンド広告業界ではいわゆる「汚い広告」が問題視されています。

 

当社では、日本の広告主様から入稿いただいた広告クリエイティブはすべて相当な手間とコストをかけて事前審査しています。加えて、薬機法審査に関しては本分野を専門とする第三者機関に審査を委託。DSP経由でプログラマティック取引を通じて入ってくる広告は事前審査を行うことができないので、事後審査で対応しています。

 

当社が運営するアドネットワークには大手新聞社様が多数含まれており、審査を厳格化してほしいとの要望を以前から受けていたこともあって、このような体制を整備しました。他のレコメンド事業者が「汚い広告」を出して売上を上げている中で、当社はある意味でやせ我慢を続けながら、厳しい広告審査基準を守ってきたのです。

 

最近になって薬機法が改正されたことを受けて、「汚い広告」の制限が強化された結果、売上を大きく減らした事業者がいるという話も耳に入っていますが、かねてから厳格な広告審査基準を遵守してきた当社の姿勢が評価される環境がようやく整ったと感じています。

 

―コロナ禍の影響についてはいかがですか。

 

2020年3月から6月にかけては、恐らく自宅に留まる人が増えたことを受けて、各媒体社様のPVが劇的に伸びました。そして同年7月以降からPVの伸びは徐々に落ち着いてきたという印象です。

 

ただし、紙媒体を持たない、ウェブ特化型メディアのPVは今でも伸び続けいます。今後の人流動向に応じて、こうしたウェブ特化型メディアのPVがいかに推移していくかについては注目しています。

 

広告主様側の動向については、2020年4月から9月にかけてとりわけブランド広告主様の間で出稿控えが顕著でした。一方でこの時期からネット企業が積極的な広告投資を開始し、現在に至るまでその勢いは落ちていません。

 

ただ例えば自動車業界では半導体不足のために受注生産が追い付かないといった現象が起きています。コロナ禍の影響は様々であり、今後の動向については注意深く見守る必要があるでしょう。

 

Cookie規制には豊富なマクロデータで対応

 

―Cookie規制が強化されると、貴社のようにコンテクスチュアルターゲティング技術を有する事業者に有利に働くのでしょうか。

 

当社を含めて、レコメンド事業者がユーザーの把握及びターゲティングに用いるデータは主に2種類あります。一つは、統計的に「Aという記事が読まれた後にはBという記事が読まれやすい」または「直近24時間で一番読まれていたのはCという記事」といったことを示すマクロデータ。もう一つは、ある特定のユーザーが「Aという記事を読んだ後にBという記事を読んだ」または「午前中は政治・経済ニュースを読むが午後はスポーツや芸能ニュースを読む傾向にある」ことを示すデータです。

 

前者はいわゆるコンテクスチュアルターゲティングに相当するものですが、後者にはCookieが広く利用されています。つまり、Cookieが仮に全く使えなくなるとすれば、レコメンド事業者であっても特定のユーザーの行動把握は難しくなります。

 

ただCookieもIDFAも既に一定の制限が課され始めていますが、当社の売上が落ちたり、もしくは広告主様から広告効果が悪くなったとのお声は寄せられていません。それだけマクロデータが機能しているということなのだと思います。

 

―Taboolaとの経営統合が破談となりました。

 

もし実現していれば、世界の主要媒体社の大半がTaboola/Outbrainのネットワークに入るはずでした。ただ結果的に経営統合は実現せず、それぞれ上場することを選択。過去1年間で両社ともに上場の準備で忙しかったというのが実状かと思います。

 

今後は上場を通じて得た資金をどのような分野に投資していくかで、両社が互いに差別化を図ることになるでしょう。当社としては、新規テクノロジーの開発や取得に加えて、未開拓の国や市場への進出を検討していく予定です。

 

―顧客層に変化はありますか。

 

まず広告主様に関して言うと、日本市場においてはこれまで総合広告会社を通じたブランド広告主様とのお取引が多くありました。ただ近年ではネット専業広告会社を通じたダイレクトレスポンス案件の比率が徐々に伸びています。一例として、アパレル系や高級酒などの商材が該当します。当社のアドネットワークには大手新聞社様が多く含まれているので、可処分所得が高いユーザーが多く、こうした商材との相性が良いと考えています。

 

また広告配信面の開拓も引き続き行っています。既にレコメンド機能は市場に浸透しているため、新たに提携となると、新規媒体へのアプローチかリプレイス誘導が主となります。

 

媒体社支援が事業の柱

 

―どのような競合環境にいると認識していますか。

 

正直なところ、他のレコメンド事業者と競合しているという意識はあまり持っていません。アドネットワークを構築する上では広告配信面の奪い合いをしているとは言えますが、広告予算の取り合いという意味では、むしろGoogleやFacebookを始めとするいわゆるウォールドガーデンとの競合になります。

 

こうした大手プラットフォームに対しては膨大な広告予算が投じられるので、広告会社は専任担当を設けます。すると広告運用に関する具体的なノウハウが蓄積されて、さらにこれら大手プラットフォームへの広告投資が促進されるという好循環が生まれます。

 

一方で当社のように専任担当者を設置してもらうことができない場合は、自社技術及びユーザーの特徴をその都度丁寧に説明することが求められます。成功事例を積み重ねていくことで、当社技術に関する理解を一層広げていかなければなりません。

 

―今後の展望についてお聞かせください。

 

皆様が日ごろ目にしている記事、映像、漫画といったコンテンツを生み出しているのはオープンウェブ領域にいる媒体社です。媒体社が存在しなければ、大手プラットフォーム上でこれらのコンテンツを楽しむこともできなくなります。だからこそ、当社は事業目的の柱に媒体社支援を据えています。

 

そもそも広告配信面がなければ、広告主が出稿できません。媒体社支援を一層強化しながら、今後もブランド広告主が安心して出稿できるような広告配信面を整備していきたいと考えています。

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「Cookieに依存しないマーケティングデータ基盤構築を」-新生CCIが語るCookieless時代のデジタルマーケティング戦略

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来るべきクッキーレス時代には、GAFAを始めとする大手プラットフォーマーの存在感がさらに増すとの憶測が囁かれている。プラットフォーマーは今、どんな戦略を描いているのだろうか。今年7月に発足したばかりのCARTA COMMUNICATIONS(CCI、サイバー・コミュニケーションズより事業承継)に、Facebook広告におけるCookieless対応の現状について話を聞いた。(聞き手:ExchangeWire Japan長野雅俊)

 

Cookielessの影響が顕在化

 

―自己紹介をお願いします。

 

後藤氏:当社のメディアソリューション・ディビジョンにおけるソーシャルメディアマーケティングチームのマネージャーを務める後藤駿弥と申します。FacebookやTwitterなどのSNS広告の運用コンサルティングや、CCI Social AdTrimというブランドでSNSオーガニックアカウント運用の支援などを行っております。直近では、Facebook社が発表した「FacebookコンバージョンAPI」の導入支援に力を注いでいます。

 

渡邉氏:データマーケティングチームに所属する渡邉理紗子です。クッキーレス対応に特化したデータマーケティングサービスである「Data Dig(データ・ディグ)」を運営しています。その中のサービスの一つとして、「FacebookコンバージョンAPI」の導入支援を行っています。

 

―「FacebookコンバージョンAPI」の導入支援を開始した経緯をお聞かせください。

 

後藤氏:EU一般データ保護規則(GDPR)、カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)、Apple社が発表したアプリのトラッキングの透明性(ATT)といった一連のデータ取得制限措置による影響が顕在化し始めています。

 

とりわけCookieを用いないデータ計測の必要性が高まっている中で、各関連事業者が次々とクッキーレスソリューションを打ち出しています。当社としては、事業規模や領域に関わらず、様々な広告主に広く利用されているFacebook広告への対応を優先的に進めたいとの考えから、「FacebookコンバージョンAPI」の導入支援を開始した次第です。

 

―「一連のデータ取得制限措置」によって、どのような影響が出ているのでしょうか。

 

渡邉氏:iOS端末へのサイトトラッキング抑止機能であるITP(Intelligent Tracking Prevention)によって、2020年ごろから広告効果の測定が徐々に行いにくくなっています。

 

資料提供: CCI

 

従来は計測用タグを活用することで、Facebook上に掲載した広告の遷移先でコンバージョンしたユーザーの数などを把握し、Facebook広告の効果を測ることができていました。しかしながら、Cookieの保持期間が短縮されるなどした結果、場合によっては広告閲覧してから24時間以上経過した後にコンバージョンしたユーザーを「Facebook広告接触後にコンバージョンしたユーザー」としては計測できなくなるなどの事態が発生しています。

 

こうした変化は徐々に起きているので、大半の広告主は「気付いたら計測値が少しずつ減少しているな」といった印象を抱いているのではないでしょうか。またGoogleもChromeでのCookie制限を2023年半ばから段階的に廃止する見込みと発表しているので、計測環境は今後ますます厳しくなることが想定されます。

 

後藤氏:それだけが直接的な要因とは限りませんが、こういったデータ取得制限の適用前と比較して、CPAが1.5倍になったという事例も報告されています。様々な要因が考えられますが、従来なら「コンバージョンしたユーザー」として識別されるべきユーザーが識別されておらず、計測上のCPAが高騰している可能性が高いです。

 

―「FacebookコンバージョンAPI」が打開策となるのでしょうか。

 

後藤氏:コンバージョンAPIは、Facebook広告において、従来通りのコンバージョン計測を可能とするためのソリューションの1つです。従来の計測用タグとの併用によって、計測の正確性を高めることが可能となります。

 

またFacebook広告は、コンバージョン数が増えるほど機械学習が進み、ターゲティング精度が向上する仕組みとなっています。コンバージョンしたユーザーを正しく識別する体制を整備すれば、パフォーマンスの最大化にもつながります。

 

どのようにCookieless時代に適応するか

 

―FacebookコンバージョンAPIは各企業が自社で実装できないのでしょうか。

 

渡邉氏:従来はピクセルタグと呼ばれる計測用タグを、Facebookの広告管理画面から出力して自社のページに貼るだけで良かったのですが、「FacebookコンバージョンAPI」ではサーバーなどにデータを一回置いた後、APIを通じて直接Facebookの管理画面に流し込むことが必要となり、サーバー構築やプログラミングといった作業が発生します。然るべきエンジニアリソースや専門知識も必要となることから、広告主が自社で実装するにはハードルが高いと考えられます。

 

こういった状況を踏まえ、エンジニアリソースおよび専門知識を有するCCIがFacebookコンバージョンAPIの導入を支援すべきと考えた次第です。

 

―「FacebookコンバージョンAPI」はFacebookでしか利用できません。トラッキング制限はFacebookのみに適用されているわけではないと思いますが、その他の媒体の計測はどうするのでしょうか。

 

渡邉氏:GAFAと総称されるいわゆるメガプラットフォーム各社が同様の対応を打ち出しており、例えばGoogleは「Google Enhanced Conversion API」を用意しています。当社は近日中にこのAPIの導入支援サービスの提供も開始する予定です。

 

―Cookielessソリューションとしては、共通IDも注目を集めています。

 

渡邉氏:共通IDは、ソリューションを導入する媒体社および広告主が自ら保有するユーザデータを提供することによって成立する枠組みとなり、自身でユーザデータを保持していないアドネットワークやDSPといった配信プラットフォームが共通IDやブラウザベンダが提供する代替手段(Appleが提供するPrivate Click MeasurementやGoogleが提供するPrivacy Sandboxが該当)を採用する流れとなっています。

 

しかしながら、GAFAに代表されるメガプラットフォームが保持するユーザデータと肩を並べる規模になるには相当な時間を要すると思われますので、Cookieless時代においては、既に大規模なユーザデータを保有しているメガプラットフォームに有利に働き、広告投資もより集中していくことが予想されます。

 

―各社でコンバージョン計測基準が異なります。各社APIをつないだ後、広告主はどのように一律評価を行うのでしょうか。

 

渡邉氏:自社でデータ基盤を構築することがこれまで以上に重要になります。プライバシーを遵守した上で、プラットフォーム側と自社の間で安全かつ安心にデータを行き交いさせる「データクリーンルーム」を活用し、自身が保有するファーストパーティーデータを軸に同一基準で広告効果検証を行うことができる環境を整備しなければなりません。

また、ファーストパーティーデータに加え、テレビ視聴データや購買データといったセカンドパーティーデータも組み合わせ、デジタル広告とテレビCMの重複効果や購買検証といったオンオフ統合の効果検証もスコープに入ってくると考えています。

 

自社データ基盤を構築すべき企業とは

 

―自社データ基盤を構築できるほどの事業規模を持つ企業は限定されるのではないかと想像します。

 

渡邉氏:たとえ事業規模が小さくても、会員基盤を保有していれば、自社データ基盤を構築する意義は大きいです。例えば、金融、保険、自動車、EC領域など、コンバージョンデータに基づくマーケティング活動を展開している広告主は特にその必要性を痛感していると思います。

 

当社としては、各社のコンバージョンAPI導入支援をあくまでも一つのきっかけとして、長期的な視点に基づいた自社データ基盤の構築も支援してまいります。その上で、データに知見があるチームと広告運用のスペシャリストの双方をそろえた当社の体制は大きな強みになると考えています。

 

―ただやはりデータ基盤の構築と聞くとその費用が課題となるような気がします。事業規模が小さい企業は手が届かないのではないでしょうか。

 

後藤氏:ご指摘の通り、企業個別にマッチするデータ基盤を構築するためには、多大な予算や期間を要し、それらが課題となって取り組みそのものが遅れ、あるいは先送りされているケースが散見されます。

 

このような課題を解決するため、CCIでは、各企業の課題に合わせたクラウドベースのマーケティングシステム提供に加え、導入前のコンサルティングから既存システムとのインテグレーション、更には稼働後の運用までを含め、ワンストップでサポートする体制を整えています。

 

これにより、データ基盤構築の期間短縮やコスト削減を実現し、さらに、企業の課題に合わせたデータ活用方針の策定、関連システムの企画・設計、運用サポートを行うことで、企業のビジネス拡大に貢献していきたいと考えています。

 

加えて先に申し上げた通り、Facebook広告は、コンバージョン数が増えるほどターゲティング精度が向上する特徴を持っています。そうした点を踏まえれば、自社データ基盤を構築する意義は非常に大きいと考えます。

 

なお現時点では、特定の条件下においてコンバージョン欠損が発生する可能性はあるものの、プラットフォーム側の技術的な対応のおかげもあり、全く計測できない状況ではありません。そのため、このタイミングではまだコンバージョンAPI連携を含めたデータ環境の整備に踏み出さない企業が多い、というのも実態です。

 

しかしながら、コンバージョン計測は今後ますます難しくなり、ChromeでのCookie制限が強化される2023年を境に大きな環境変化が起きることが確実視されています。当社としては今からしっかりと準備を進めることで、来るべきCookieless時代に対応したデジタルマーケティングを支援していきたいと考えています。

The post 「Cookieに依存しないマーケティングデータ基盤構築を」-新生CCIが語るCookieless時代のデジタルマーケティング戦略 appeared first on Exchangewire Japan.

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