Quantcast
Channel: インタビュー Archives - Exchangewire Japan
Viewing all articles
Browse latest Browse all 648

テレビと新聞の2大マスデータが挑む、デジタル広告ビジネスの進化形[インタビュー]

$
0
0

読売新聞東京本社(以下 読売新聞社)と、ソニーグループのSMNは今年4月にデジタルを軸とした広告ビジネスで協業することを公表した。

その背景とプロダクトの特長、そしてその意義について、事業を陣頭指揮する方々にお話を伺った。

 

(写真右から)
読売新聞東京本社 広告局 専門委員 國谷 一樹 氏
読売新聞東京本社 デジタルビジネス部 高橋 健太郎 氏
SMN株式会社 商品企画部 チーフプランナー 黒澤 菜奈子 氏
ネクスジェンデジタル株式会社 代表取締役社長 谷本 秀吉 氏

 

目的は、広告枠からの脱却

-自己紹介をお願いします

國谷氏:國谷 一樹と申します。広告局員として読売新聞東京本社に入社し、2012年にデジタル広告の部署に異動して、予約型広告の営業担当となりました。2014年にDFP(現Google Ad Manager)との契約を担当し、プログラマティックを導入しました。
その後、マーケティング部門を経て、クリエイティブユニットであり、オウンドメディアやランディングページを制作できるYOMIURI BRAND STUDIOを立ち上げたのち、現在はデジタルマーケティングを中心とした新規事業開発に携わっています。

高橋氏:デジタルビジネス部の高橋です。2016年に入社しました。2017年に現部署の前身のメディアデザイン部に配属され、一貫してデジタル広告を取り扱ってきました。
直近の3年間はプログラマティックを担当していました。
2020年から始まった読売グループのデータ基盤(CDP)プロジェクトyomiuri ONEの事業プロジェクトには発足当初からコアメンバーとして関わっており、データ活用ビジネスも担当しています。

谷本氏:SMNの執行役員として、今年3月までアドテクノロジー事業のプロダクト部門を担当していました。4月以降は、グループ会社ネクスジェンデジタルの代表取締役に専任しています。

黒澤氏:私は2015年7月にSMNに入社後、谷本のもとで新規ビジネスやプロダクトの立ち上げをしてまいりました。対外的な提携交渉や、これに関わるプロジェクトマネジメントを行ってまいりました。

 

-両社の提携の背景およびYOMIURI X-SOLUTIONS(略称YxS)の座組についてお聞かせ下さい

國谷氏:当社内で、1年ほど前にこのプロジェクトを立ち上げました。目的は、我々が持っている従来のデジタルメディアの広告枠ビジネスからの脱却です。

デジタル広告の市場規模は約2.7兆円に達しており、もはやマス4媒体の規模を抜きました。新聞広告は約3,800億円の規模がありますが、新聞社のデジタルメディアの枠を広告マネタイズできているのは約213億円で、これはデジタル広告市場全体の1%にも満たない規模です。我々としては、この約213億円ではなく、約2.7兆円を取りに行きたいと考えました。

そうなると、自社の媒体を売っていても上限は知れています。そこで、プログラマティックの市場に進出する必要があるということになりました。お互いを補完し合い、強みを引き出し合うことが出来るパートナーを探した結果、SMNにたどり着き、昨年9月に初めてお声がけしました。

 

-事業提携先の選定について、複数候補の中からSMNに絞られた理由をお聞かせください

國谷氏:三つの理由が挙げられます。一つ目は、テレビ視聴データ広告配信サービス「TVBridge」をお持ちであること、二つ目はSMNが独自開発した人工知能搭載のDSP「Logicad」をお持ちであること。そして三つ目はソニーグループであるという信頼性です。

我々は390万IDの属性情報や、読者の記事の閲読履歴、よみうりランドや読売巨人軍のHPの情報などを合わせると、1億6,000万UBにも及ぶ情報を持っています。我々と同じマスメディアのデータを持つSMNのTVBridgeと掛け合わせることで、2大マスメディアのデータを活用したデジタルのターゲティング広告は、他にはない強みになります。

二つ目のLogicadは、国産で優れた広告配信基盤であり、我々にとってはとても魅力的でした。また三つ目については、ソニーグループであれば、コンプライアンスの面において何の心配もなく、かつ互いに様々なグループ内アセットがあり、将来的な協業の拡大も視野に入る点も、やはり最終的な意思決定に至った大きな理由の一つです。

テレビと新聞が挑む、デジタル広告ビジネス

-SMN側は読売新聞社側からの打診をどのように受け止められましたか?

谷本氏:最初にお話をいただいたときは、驚きました。一方で我々も国内4社のテレビメーカーとの取り組みによって、国内最大級のテレビ視聴データ TVBridgeを提供している広告事業者として、次のマスメディアまたはオフラインのデータの活用をいかに実現するかということをずっと考えてきました。オフラインについては、DOOHへのプログラマティック配信でその実現に向けた一歩を踏み出しました。次のマスメディアについてはどのようにするべきかという戦略を構想していた矢先に、読売新聞社にお声がけをいただきました。

テレビと新聞という二大マスメディアのデータを活かし、プログラマティックというフィールドで事業を始めるということは、大きなインパクトがあると感じております。

 

-まったく新しい取り組みであると認識していますが、今後競合が現れるということは想定されていますか?

谷本氏:TVBridgeは、コネクテッドテレビの普及とともに、データ総数は順調に増加しています。一元化している4メーカーのデータ総数は現時点で約780万IDあり、マスリーチが可能なデータとして評価を頂いております。

高橋氏:デジタルの読者IDを保有しているのは、他の新聞社も同様ですが、当社はデジタルのサブスクリプションサービス単体での展開は行っていません。
読売ID読者会員のユーザーは、全て新聞購読者の方です。この点は、当社が保有するデータの独自性だと考えています。

新聞社が始める広告業

―「YxS Ad Platform」の概要についてお聞きかせください

高橋氏:YxS Ad Platformは、SMNが提供するTVBridgeを含む様々なデータと、読売新聞社のyomiuri ONEのデータを活用することで、テレビ視聴データと新聞購読者のデータおよび、読売新聞グループのデータとを掛け合わせてプログラマティック広告配信をすることが可能な広告プラットフォームです。

テレビ視聴データと、新聞購読者データにより、独自のユーザーセグメントを生成してターゲティング配信を行い、分析と最適化をすることが可能です。
これにより、生活者にとって心地よいコミュニケーションの体験を創出することを目指しています。

國谷氏:例えばスポーツ系の広告主向けに、読売巨人軍のファンクラブ会員で、テレビで野球番組を視聴している方をセグメントして、広告のターゲティング配信をすることが出来ます。

実証実験では4つのステージに分けて、広告を配信しました。

ステージ1は、スポーツに関する興味関心ターゲティング、ステージ2はyomiuri ONEのデータを使用して、巨人軍などの情報に接した方、ステージ3はTVBridgeのデータを使い、スポーツ番組の中継をしている方、そしてステージ4ではyomiuri ONEと、TVBridgeを掛け合わせたセグメントへの広告配信を実施した結果、CTRがステージ1の最大4.6倍となりました。これはあくまでも最大瞬間風速であり、必ずこの結果となる限りではないものの、広告配信後の初速のクリック件数の増加には目を見張るものがありました。

 

黒澤氏:従来のDSPでリターゲティング配信をしているだけでは、ユーザーが枯渇してしまいます。今回TVBridgeとyomiuri ONEの連携が出来たことで、パーチェスファネルの上位であるマス媒体に近いターゲティング、つまり認知施策を実現できたことは、大きな意義がありました。

近年は、従来多かったダイレクトレスポンス目的以外の案件が増え続け、顧客層もメーカーや放送局など、異なる新しい層が増えています。そして今回の読売新聞社との提携で、より広いリーチや認知を獲得するためのターゲティング広告商品が実現できるのではないかと考えております。

 

谷本氏:先般のリリースで発表した通り、YOMIURI X-SOLUTIONSは読売新聞東京本社内に設置された広告業を行う社内組織であり、7月1日にリリースした「YxS Ad Platform」は、今回の協業によって実現した広告プロダクトです。これまで読売新聞社が取り組んでこなかった新しい事業です。したがって、このサービスの開始は、読売新聞社が広告業を開始したことのリリースでもありました。

広告業においては、DSPによる広告配信のみならず、広告主のマーケティング活動を支援するにあたり、他の広告プラットフォームを活用する場合もあります。
読売新聞東京本社にはYOMIURI BRAND STUDIOもあります。コミュニケーション戦略においては、DSPだけに閉じずに、提案の幅を広げていくということが、今回の取り組みの展望です。

 

國谷氏:谷本さんが説明して下さったように「YxS」には広告会社としての機能があります。したがって、統合型マーケティングとして一つのキャンペーンをフル設計することが出来ます。テレビや新聞などのマス媒体をはじめとするすべての媒体の核として位置づけるのが、「YxS Ad Platform」です。

例えばターゲットしたユーザーが、朝に新聞を読んで広告に接触し、さらに通勤途中にスマートフォンで再度広告に接触するという状況を、高い精度で実現することが出来るようになります。

テレビ、新聞、インターネット・・・など、すべての媒体のタッチポイントを整理したうえで、「YxS Ad Platform」を提案していきたいと考えております。これにより、ビジネスをスケールさせることが出来る。これが、我々が定款を変えてまで新たに広告事業に進出した理由です。

 

谷本氏: SMNはテクノロジーとデータは持っていますが、マーケティング事業において、より強いソリューションを開発していくためには、まだまだ足りない部分もあり、そこを今回の協業によって補完し合いながら、生活者にとって心地よいコミュニケーション社会の実現を目指すことにこの提携の目的があります。今後の新しいプロジェクト展開も様々な領域や可能性について話し合われております。

 

國谷氏:我々は営業人脈と媒体はありますが、テクノロジーとテレビ視聴データはありません。今回の事業提携は双方の長所と短所がうまく補完し合っています。

 

-「YxS Ad Platform」の提供体制をお聞かせください。

谷本氏:我々のソリューションの提供価値について、広告主の方々に直接自らの口でお伝えしたいという気持ちはあります。パートナーである広告会社を通して直接お問い合わせいただいても、ご提案が可能です。商流は問いません。

 

目指すは広告ビジネスの進化形

-今後の取り組みについてお聞かせください。

國谷:「YxS Ad Platform」は将来的には広告主がセルフサービスで自由にお使いいただけるようにしたいという構想があります。

 

谷本氏:そして、この提携は2社だけに閉じることなく、パートナーシップを広げていきたいと考えております。異なる事業体の企業など何らかのデータ基盤をお持ちで、新たな価値を付ける取り組みであれば、是非提携したいと考えております。既に数社からパートナーシップに関するお声がけをいただいております。

 

國谷氏:我々が描いているのはマスの力で無関心層を認知層に変え、そこで心が動いた人をデジタルで囲ってファネルのステージを進めていき、たとえ途中で懐疑的になったり、比較検討の段階で不安になったりした人たちがいても、当社の強みであるコンテンツ、制作力を生かしたオウンドメディアを用意して態度変容を促し、コンバージョン率を高める・・・ということです。

その各ステージでは、SMNのAIを活用した広告の最適化運用で、さらに効率を高めるということを考えております。

 

黒澤氏:まずは7月にリリースしたサービスをたくさんの広告主に活用していただくように提案を進めてまいります。近い将来はデータの収集と蓄積を進めていき、個人情報に関わる対応をしたうえで、強いデータプラットフォームを作ります。

現在、広告配信において実施している、データだけを切り出して、他の企業様のマーケティング活動などにご使用いただくということや、当社が企業様のデータをお預かりして、これを分析することでお役に立てることが出来ればいいなと考えております。

 

高橋氏:データを切り出して分析するようなお手伝いは、企業のプロダクト開発にも生かしていただくことが出来るのではないかとも考えております。

データをご活用いただくことで、企業は「うちの商品はこういう関わり方もしているんだ」、「こういう層に興味を持たれているんだ」ということがわかります。それにより、新たなプロダクト開発の新たな方向性に舵を切るきっかけとなる分析をご提供できるかもしれません。

 

谷本氏:両社の力を合わせることで、GAFAMにもない広告ビジネスを創出していければと考えております。

 

The post テレビと新聞の2大マスデータが挑む、デジタル広告ビジネスの進化形[インタビュー] appeared first on Exchangewire Japan.


Viewing all articles
Browse latest Browse all 648

Trending Articles